ミトコンドリアの断片化とドーナツ化が増強するミトコンドリアの分泌は骨形成を促進する
Mitochondrial fragmentation and donut formation enhance mitochondrial secretion to promote osteogenesis
著者: | Suh J, Kim NK, Shim W, et al |
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雑誌: | Cell Metab, 2023; 35: 345-360. |
- ミトコンドリア
- 骨芽細胞分化
- Opa1
論文サマリー
ミトコンドリア構成成分は骨基質に豊富に存在するが、その意義は不明であった。この論文では、ミトコンドリアとミトコンドリア由来小胞(MDV)が成熟骨芽細胞から分泌され、前駆骨芽細胞の分化を促進する事が示された。骨芽細胞分化刺激は、CD38/cADPRシグナルを介してミトコンドリアの断片化とドーナツ化、その後のミトコンドリアの分泌を促進し、この過程はOpa1ノックダウンやFis1過剰発現によって促進された。逆にOpa1発現を誘導するミトコンドリア融合促進因子M1は骨形成を阻害し、骨芽細胞特異的Opa1ノックアウトマウスの骨量は増加した。細胞外に分泌されたミトコンドリア成分とMDVの添加は、マウス頭蓋骨欠損モデルの骨再生を増強した。これら結果から、成熟骨芽細胞のミトコンドリアは細胞外分泌に適した形状に変化し、その結果分泌されるミトコンドリアとMDVは、骨形成を促進する重要な役割を担うことが示唆された。
推薦者コメント
成熟骨芽細胞が分泌するミトコンドリア成分が他の前駆骨芽細胞の分化を促すという、骨形成促進創薬のヒントとなる研究である。ただしin vivoデータは旺盛な骨形成を伴う骨欠損モデルと成長期の骨の観察に留まっているので、adultの骨リモデリング期の解析も興味がある。ミトコンドリアが含有する何らかの蛋白成分に骨形成促進効果があるところまで示されたので、今後はその同定と標的シグナル経路の解析が重要なテーマであろう。(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科骨関節医学講座・前田 真吾)