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口腔粘膜破壊は関節リウマチにおいて抗シトルリン化-細菌および-ヒトタンパク質への抗体反応を誘発する

Oral mucosal breaks trigger anti-citrullinated bacterial and human protein antibody responses in rheumatoid arthritis
著者:Brewer RC, Lanz TV, Hale CR et al.
雑誌:Sci. Transl. Med. 2023; 15: eabq8476.
  • 口腔内細菌
  • シトルリン化
  • ACPAs

論文サマリー

 歯周病は、抗シトルリン化タンパク質抗体(ACPA)を有する関節リウマチ(RA)患者で高頻度に見られ、口腔粘膜炎症がRAと何らかの関与があると想像される。本研究では、RA患者から採取した血液サンプルにおいて、ヒトと細菌のトランスクリプトミクス分析が行われた。その結果、RAと歯周病を合併する患者は、特徴的な単球サブセットに関連した口腔菌血症を繰り返していることが発見された。さらに血液中にも検出された口腔細菌は広くシトルリン化されており、そのエピトープは広範囲に体細胞超変異した ACPAの標的にもなっていた。まとめると、(i) 歯周病による反復する口腔粘膜破壊により、シトルリン化口腔細菌が循環中に放出され、それが (ii) 生体内の炎症性単球サブセットを活性化し、 (iii) ACPA産生B細胞をも活性化するために、親和性の成熟とシトルリン化ヒト抗原へのエピトープスプレッディングが促進するということが示唆された。

推薦者コメント

 本論文は、歯周病による口腔粘膜の断続的な破壊によって、口腔菌血症が引き起こされ、RAの発症に関連することを提唱した。また、筆者たちが調べた限りでは生体内の粘膜の中でも口腔内細菌が高頻度にシトルリン化されていることがわかった。シトルリン化細菌がACPA産生B細胞をさらに活性化することでシトルリン化ヒト抗原への親和性を高めている可能性も示された。口腔内細菌が獲得免疫系に作用して自己免疫疾患の増悪の一因が示唆されたことは興味深い。(東京大学医学部附属病院 骨・軟骨再生医療講座・寺島 明日香)