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感覚ニューロンにおける過剰な機械受容は関節拘縮を引き起こす

Excessive mechanotransduction in sensory neurons causes joint contractures
著者:Ma S, Dubin AE, Romero LO, et al.
雑誌:Science 2023; 379(6628):201-206
  • Piezo2
  • 関節拘縮
  • 感覚ニューロン

論文サマリー

 本研究ではPIEZO2の過活動マウスモデルを用い、機械受容チャネルであるPIEZO2の筋肉・腱発生における役割を明らかにすることを試みた。遠位関節拘縮症5型(DA5)患者でPIEZO2の機能獲得型変異を認めることに着目し、同様の機能獲得型PIEZO2を発現するマウスを作出したところ、四肢関節の拘縮や腱の短縮、運動障害を認めた。PIEZO2過活動状態がDA5様症状をもたらす細胞集団や時期を検討した結果、胎生期および生後7~21日に、固有感覚ニューロンでPIEZO2の過活動を誘導するとDA5様症状が誘導された。ボトックス投与によってPIEZO2過活動によるDA5様症状がレスキューされる一方、運動ニューロンから筋肉への神経伝達のみを阻害するα-bungarotoxin投与ではレスキューされなかった。以上より、感覚ニューロンにおける過剰な機械的刺激の感知が腱や関節の発生を障害し、DA5様症状をもたらすと考えられた。さらに、必須脂肪酸であるエンコサペンタエン酸(EPA)食を与えると、DA5様症状の軽減を認めた。

推薦者コメント

 本論文はPIEZOの発見により2021年ノーベル医学・生理学賞を受賞したArdem Patapoutian博士のグループによる論文である。生後のある一定の期間に筋・腱などの運動を感知する固有感覚ニューロンが過剰な機械受容状態に陥ると、腱や関節の発生が障害され、関節拘縮に至ることを明確に示された。さらに、既にサプリメント等で使用されているEPA食がその治療法として有効である可能性が示されたことも興味深い。(大阪大学大学院歯学研究科組織発生生物学講座・池田 悠希・大庭 伸介)