骨髄由来のIGF-1が成体骨格の維持・再生を制御する
著者: | Jianfang Wang, Qiaoling Zhu, Dandan Cao, et al |
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雑誌: | PNAS 2023 Jan 3;120(1):e2203779120. |
- IGF-1
- 骨形成
- PRP
論文サマリー
骨発生に必須なIGF-1は骨芽細胞や軟骨細胞に由来するが、成体骨格を制御するIGF-1の供給源はわかっていなかった。本研究では、マイクロアレイ解析により骨髄間質細胞と巨核球/血小板が成熟個体のIGF-1の供給源であることを示した。骨髄間質細胞特異的にIgf1を欠損させると、骨形成の低下、損傷後の骨再生遅延、骨髄脂肪細胞分化の亢進が見られた。一方、巨核球/血小板特異的Igf1欠損は骨髄脂肪形成には影響せず、骨形成と再生の低下のみ見られた。これらの結果から、骨髄間質細胞と巨核球/血小板が、成体骨格の維持・再生を担うIGF-1の重要な供給源であることが明らかになった。
さらに、骨折治癒を促進することが知られている多血小板血漿(PRP)に着目し、PRPに含まれる様々な成長因子のうちどの因子が骨修復効果を有するか検討した結果、Pf4-Cre;Igf1f/f マウスのPRPで骨形成能が低下したことから、巨核球/血小板由来のIGF-1はPRPの治療効果の根幹をなすことが示唆された。
推薦者コメント
本研究では、骨髄間質細胞と巨核球/血小板が、成体骨格を維持・再生するための重要なIGF-1の供給源であることが明らかになったが、これら細胞から分泌されるIGF-1が骨の再生・維持においてどのように使い分けられているのか今後明らかにされることを期待する。さらに、PRPによる骨治療効果は巨核球/血小板由来のIGF-1であることがわかったことから、さらに効率の良い治療法の開発が期待できるのではないかと思った。(岡山理科大学獣医学部獣医実験動物学講座・藤原 渓・伊豆 弥生)