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グルコースとグルタミンに依存するエネルギーは、骨細胞のカルシウム動態を制御することで、負荷軽減後の骨力学的応答を回復させる。

Glucose- and glutamine-dependent bioenergetics sensitize bone mechanoresponse after unloading by modulating osteocyte calcium dynamics
著者:Xiyu Liu, Zedong Yan, Jing Cai et al
雑誌:The Journal of Clinical Investigation. 2023; 133 (3)
  • 廃用性骨粗鬆症
  • 機械的応答
  • グルタミン

論文サマリー

 長期入院や宇宙飛行などに起因する廃用性骨粗鬆症は、再歩行後の骨機能回復が遅く、不十分であることが問題である。本研究は尾部懸垂後に骨細胞のエネルギー代謝が変化し、これを是正することで機械的応答性を回復させ、より早く骨機能を回復させることを明らかにした。著者らはこれまでに、骨組織へのメカニカルストレスがlacunocanalicular system内の間質液流を誘発し、そこに存在する骨細胞内Ca2+振動を惹起することを報告した。本論文では、負荷軽減後の再負荷した骨細胞はCa2+応答性が低下したままであり、これはHIF-1a/PDK1系を介した解糖系の亢進とそれに伴うATP合成の減少に起因することをRNA-seq解析により示した。HIF-1aは、骨細胞でグルタミナーゼ2発現を転写的に誘導しており、尾静脈投与によるPDK1阻害やグルタミン補給は、骨細胞でのTCAサイクルのエネルギー源を供給することでATP産生と骨細胞のCa2+振動を回復させ、負荷軽減により低下した再負荷へのメカノ応答性を回復することを示した。

推薦者コメント

 本論文は廃用性骨粗鬆症後に骨細胞でのエネルギー代謝が変化することに着目し、骨細胞機能を全身性グルタミン投与により回復する点が非常に興味深かった。本研究ではグルタミンの静脈内投与であったが、経口投与でも効果があれば、さらに臨床応用しやすくなるのではないかと思った。また、全身性グルタミン投与が、骨細胞特異的に効いているのか、あるいは骨細胞以外にも影響するのか明らかにされることを期待したい。(岡山理科大学 獣医学部 獣医学科 実験動物学講座・櫛笥 悠人・伊豆 弥生)