ビタミンCは骨芽細胞分化と石灰化をエピジェネティックに制御する
著者: | Thaler R, Khani F, Sturmlechner I, et al |
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雑誌: | Nat Commun. 2022; 13: 5883. |
- ビタミンC
- 骨芽細胞分化
- エピジェネティクス
論文サマリー
ビタミンCは、コラーゲンの三重らせん構造の成熟化に関与する補因子である。ビタミンCの欠乏は骨組織を含む結合組織の形成異常を引き起こすことが知られている。本研究において、著者らはビタミンC欠乏症および壊血症のモデルであるGluo(L-グロノラクトンオキシダーゼ)欠損マウスを用いて各種解析を実施した。その結果、ビタミンCの欠乏が骨量の減少や、骨形成関連遺伝子の発現低下を誘導することが明らかとなった。また、これらの現象は、H3K9me3およびH3K27me3のヒストン脱メチル化や、5mCのDNAヒドロキシメチル化を介したエピジェネティックな作用により引き起こされることが示された。くわえて、5mCヒドロキシメチラーゼTET1/2欠損マウスは、壊血病モデルマウスで観察される骨量減少を模倣することが明らかとなった。以上の結果から、ビタミンCはTET1/2を介したエピジェネティックな作用により、骨芽細胞分化と骨形成を制御することが示された。
推薦者コメント
何十年もの間、ビタミンCによる骨組織の恒常性維持メカニズムの大部分は、コラーゲンの成熟化作用に起因するものと考えられていた。本研究により、ビタミンCが骨芽細胞分化と骨形成をエピジェネティックに制御することが初めて明らかになった。過去の報告から、ヒトにおけるビタミンCの摂取量の低下と骨折リスクの増大には正の相関があることが知られている(Sun Y, et al. Osteoporos Int. 2018;29(1):79-87)。著者らは、ビタミンCが骨恒常性や骨の健康維持に寄与するエピジェネティック薬となる可能性を示唆しており、本研究成果の社会実装が期待される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・徳村 和也・檜井 栄一)