日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 久保 拓也・檜井 栄一

骨格幹細胞におけるエストロゲン感知による骨再生制御メカニズムには性差がある

Sexually dimorphic estrogen sensing in skeletal stem cells controls skeletal regeneration
著者:Andrew T, Koepke L, Wang Y, et al
雑誌:Nat Commun. 2022; 13: 6491.
  • 骨格幹細胞
  • エストロゲン
  • 性的二型性

論文サマリー

 性的ニ型性を示す組織は、性ホルモンによって制御される細胞から構成される。これまでに骨芽細胞や破骨細胞の増殖や分化を支配する、様々なホルモンや転写因子が同定されてきた。一方で、骨再生における性的二型性を規定するメカニズムは不明のままである。著者らは、成体期の雄マウスと雌マウスにおける骨折修復過程を評価することで、性ホルモンによる骨再生制御メカニズムを検討した。その結果、骨格幹細胞による骨再生がエストロゲンシグナル依存的であることが、雌マウス特異的に見出された。さらに、エストロゲンがマウス・ヒト骨格幹細胞の骨格形成関連シグナルを亢進させることが明らかとなった。くわえて、エストロゲンが骨格幹細胞の自己複製や分化に必須の因子であることも示された。また、著者らは、局所的エストロゲン療法が、骨修復促進作用を示す新規アプローチとなる可能性を提唱している。

推薦者コメント

 骨再生過程において、エストロゲンが雌特異的にヒト・マウス骨格幹細胞の機能を制御することが初めて明らかになった。また、本研究において、骨折部位へのエストロゲン含有PLGAナノ粒子の局所的投与が、卵巣摘出マウスの骨再生を促進させることが示されている。本アプローチは、女性の骨折や歯科インプラント治療などの様々なケースにおいて、適用可能であることが期待できる。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・久保 拓也・檜井 栄一)