機能的バイオマテリアルのテストベッドとしての超分子縞状構造を有する合成コラーゲンの設計
著者: | Hu J, Li J, Jiang J, et al. |
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雑誌: | Nat Commun. 2022;13: 6761. |
- 合成コラーゲン
- バイオマテリアル
- 粗視化シミュレーション
論文サマリー
細胞外基質には豊富に存在するコラーゲンは、階層的な折り畳み構造やコラーゲン分子が集合した縞状構造をもち、細胞-細胞外基質の相互作用や力学負荷を介在するのに重要な役割を担う。本研究では、天然コラーゲンの形態と生物学的特性を再現し、機能的バイオマテリアルとなりうる合成コラーゲンの作成を行った。本研究で開発した合成コラーゲンのポリペプチド鎖は、変更可能な3重らせん分子からなる機能性ドライバーモジュールと、機能性ドライバーモジュールの凝集を促進する接着モジュールからなり、2つのモジュールの長さと配列を変えることで、コラーゲンの縞状構造を成すギャップ領域とオーバーラップ領域の幅を厳密に調節することが可能である。この合成コラーゲン凝集のメカニズムは、原子論的モデルと粗視化シミュレーション(coarse-grained simulation)を用いて構築され、また、マルチスケールシュミレーションによってその妥当性が示された。なお、本研究で得られた合成コラーゲンは、天然コラーゲンに匹敵するレベルで骨芽細胞分化を促進することが明らかとされ、今後、安全で機能的なバイオマテリアルの供給とコラーゲンの生物学および関連疾患への理解が進むことが期待される。
推薦者コメント
コラーゲンは、生体内での担体材料や再生医療の材料として期待されるものの、動物由来コラーゲンは安全性などの問題から敬遠される傾向にあり、合成コラーゲンの開発が進められてきた。本研究にて開発された合成コラーゲンは、天然コラーゲンのような縞状構造を有し、同等の骨芽細胞分化促進能を有することから、今後、実用化へ向けた研究開発が進み、骨再生をはじめ様々な再生医療で応用されることを期待したい。(北海道大学大学院歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)