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骨細胞は骨と骨髄の老化を制御する

Osteocytes regulate senescence of bone and bone marrow
著者:Ding P, Gao C, Gao Y, et al.
雑誌:Elife. 2022;11: e81480.
  • 骨細胞
  • 老化
  • senescence-associated secretory phenotype

論文サマリー

 骨格系には、間葉系幹細胞や造血幹細胞から生じる一連の高度な細胞系列があり、骨や骨髄の恒常性を決定している。筆者らは、骨細胞にこれら細胞系列の分化や組織恒常性を制御する機能が存在する可能性を推測した。本研究において、DMP1陽性骨細胞にジフテリア毒素を発現させ骨細胞を死滅させたマウスでは、重度のサルコペニアや骨粗鬆症、変性後弯症が生じ短命であることが明らかとなった。また、同マウスにおける骨細胞数の減少は、間葉系幹細胞系列の分化を変化させ、骨形成を抑制する一方、破骨細胞分化を誘導していた。また、Single cell RNA-seq解析により、造血系の細胞系譜が骨髄細胞分化へと動員され、骨髄球性前駆細胞、好中球、単球が増加する一方、リンパ球新生が障害されB細胞が減少することが示された。これらの原因は、骨細胞死により誘導されたsenescence-associated secretory phenotype(SASP)が骨髄に蓄積し、間葉系幹細胞と造血幹細胞の両者に作用することであると考えられた。以上より、骨細胞は、老化を介して、骨と骨髄に存在する細胞系列分化の制御に重要な役割を果たすことが示された。

推薦者コメント

 これまで骨細胞による骨芽細胞・破骨細胞活性や好中球分化調節についての報告がなされる一方、老化における骨細胞ネットワークの破綻やSASPを介した加齢性の骨量減少への寄与が示唆されてきた。本研究により、骨細胞が、細胞の老化や老化を制御する役割を担い、SASPを介して間葉系幹細胞や造血幹細胞分化の調節に寄与する可能性が示されたことから、今後、加齢に伴う骨疾患での骨細胞の役割について、さらなる解析が望まれる。(北海道大学大学院歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)