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健全な造血,白血病,固形腫瘍転移に対する細胞動態標準化のためのヒトミニボーンエンジニアリング

Engineering human mini-bones for the standardized modeling of healthy hematopoiesis, leukemia, and solid tumor metastasis
著者:Grigoryan A, Zacharaki D, Balhuizen A, et al
雑誌:Sci. Transl Med. 2022; 14: eabm6391.
  • ヒトミニ骨
  • 骨髄微小循環
  • MSOD-B細胞

論文サマリー

 骨髄微小環境は、造血機能を維持するために必要不可欠な要素を生涯にわたり提供するが、血液疾患進行のホットスポットでもあり、固形腫瘍の転移が最も多く発生する。

 本研究の目的は、健康/悪性の造血や骨転移性腫瘍に対する標準化ヒト骨器官モデルを構築し、それらを検証することにある。本研究では、カスタムデザインされたヒト間葉系細胞株であるMSOD-B細胞を用い、迅速かつ標準化されたヒトミニ骨の作製が可能となった。ヒト化小骨 (hOss) は、幹細胞の特性を保持したヒト間葉系ニッチが存在する完全な成熟骨と骨髄構造から構成されていた。マウス骨と比較して、ヒト臍帯血由来の造血系細胞と原発性急性骨髄性白血病サンプルの生着が有意に優れ、hOssが乳癌細胞の転移部位となることが分かった。さらに、神経芽細胞腫患者由来の異種移植細胞も生着を認め、臨床的な溶骨性病変が再現されていた。

推薦者コメント

 骨髄微小環境の再現にはゼノグラフトマウスモデルの使用が一般的だが、ヒト骨髄微小環境を反映しておらず、幹細胞と骨髄微小環境におけるヒト特異的な機能的相互作用を検索することは困難である。本研究では、著者らが開発したMSOD-B細胞株を用い、これらの問題点を克服するために研究が行われた。本研究で開発されたヒトミニ骨マウスモデルは、健全または病的な状態における骨髄微小環境の解明に大きく寄与すると考えられた。(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)