TET酵素はRUNX2の標的遺伝子発現時におけるクロマチンのアクセシビリティを高めることで骨格形成を制御している
著者: | Wang L, You X, Ruan D, et al |
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雑誌: | Nat Commun. 2022; 13(1):4709. |
- TET
- Runx2
- エピジェネティック制御
論文サマリー
DNAのシトシン残基5位の炭素がメチル化を受けた状態 (5-メチルシトシン:5mC)では、クロマチン凝集が進み遺伝子発現がオフになる。一方、TET酵素は、5mCのメチル基を酸化して5-ヒドロキシメチルシトシン (5hmc) に変換することにより脱メチル化反応を駆動し、クロマチンアクセシビリティーを向上させる。本論文では、骨格の成長過程におけるTETの機能を検討した。Prx1-creを用いて、骨格の間葉系細胞特異的に全てのTETファミリー蛋白質(TET1/2/3) を発現抑制したマウス(TCKOマウス)を作製した。TCKOマウスの骨組織ではDNAのメチル化が著しく亢進しており、骨芽細胞および軟骨細胞への分化の減弱を起因とする骨成長阻害を呈した。また、TETファミリー蛋白質のいずれかの発現を戻すことによりTCKOマウスの表現型が正常化することから、これらファミリー蛋白質は相補的に機能することが示された。重要なことに、TETは触媒ドメインを介してRUNX2と直接結合した。それにより、RUNX2が結合する遺伝子プロモーター領域周辺の脱メチル化を誘導して転写活性を促進することが示された。
推薦者コメント
クロマチンにRunx2がアクセスするメカニズムを示した重要な報告である。また、Runx2の強制発現もしくは欠損がクロマチンの開閉状態を変化させることを示し、Runx2がゲノム構造の調節に働くことを実証した報告もなされている (Cell Rep. 2022; 40(10):111315)。以上は、Runx2がクロマチンリモデリングを介して細胞運命を決定する「パイオニア転写因子」として機能する可能性を示すものであるが、未だ不明な点も多くさらなる検討が待たれる(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)