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TGFβによってリプログラムされたマクロファージのTNF刺激は、破骨細胞分化を促進する非カノニカル経路となる

TGFβ reprograms TNF stimulation of macrophages towards a non-canonical pathway driving inflammatory osteoclastogenesis
著者:Yuhan Xia, Kazuki Inoue, Yong Du, et al
雑誌:Nat Commun. 2022 Jul 7;13(1):3920.
  • TGFβ
  • TNF
  • 破骨細胞

論文サマリー

 正常の骨代謝にかかわる破骨細胞分化はRANKLを中心とした制御機構として広く理解が進んでいる一方で、関節リウマチなどの病態で骨・関節を破壊する炎症性破骨細胞の分化メカニズムは不明な点が多い。本研究では、単球からマクロファージへの分化段階でTGFβ刺激に続いて、炎症性サイトカインであるTNFを処理するとRANKL非依存的に破骨細胞分化が誘導される知見を端緒に、炎症性破骨細胞の制御機構の一端が解明された。ミエロイド系列特異的にTGFβII型受容体を欠損させたマウスでは、関節炎モデルによって引き起こされる骨破壊が抑制された。さらに、ATAC-seqとRNA-seq解析の結果、TGFβ刺激は、NFATc1を含む多くの破骨細胞関連遺伝子のクロマチン構造をオープンにすることが明らかとなった。この変化は、破骨細胞分化関連遺伝子の発現を増加させるだけでなく、破骨細胞分化を抑制するIRF8のタンパク質分解を促進することや、TNFが本来誘導するIRF1-IFNβ経路を抑制する。さらに、B-MybがTGFβ刺激に伴って誘導されることで、RANKL刺激に伴う破骨細胞分化とは異なる経路で、炎症性破骨細胞分化が促進される実態が明らかにとなった。

推薦者コメント

 関節リウマチ病態では、形質を異にする様々な免疫細胞の多様なサブセットが機能している。マクロファージ系列の細胞においても、滑膜にライニングする上皮細胞の特性をもつCX3CR1+TREM+細胞やサブライニングするCX3CR1-MHCIIhigh細胞やCX3CR1- RELMα+細胞などの組織常在性マクロファージに加えて(Culemann S et al., Nature 572, 670-5, 2019, Sci Adv 7, 1-15, 2021)、炎症性破骨細胞の起源となる血液循環単球由来のCX3CR1+Ly6CintF4/80+I-A/I-E+マクロファージなど、実に多様なサブセットが存在する(Hasegawa T et al., Nat Immunol 20, 1631-43, 2019)。本研究で見出された新たなマクロファージの形質転換機構が、種々のマクロファージサブセットの関係性を解き明かし、さらには、特定のサブセットを標的にすることでより効果的な炎症性骨破壊の治療法開発につながることを期待したい。(同志社大学生命医科学部細胞代謝化学研究室・松井 廉・西川 恵三)