日本骨代謝学会

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体重増加による力学的負荷が成長期後の骨成長の停止と骨石灰化の促進をもたらす

Mechanical forces couple bone matrix mineralization with inhibition of angiogenesis to limit adolescent bone growth
著者:Dzamukova M, Brunner TM, Miotla-Zarebska J, et al.
雑誌:Nat Commun. 2022; 13: 3059
  • 骨成長
  • 力学的負荷
  • DMP1

論文サマリー

 骨の成長には,強い血管新生作用を持ち,骨芽細胞による骨形成を導くH型血管が重要な役割を担っている。H型血管は成長期を過ぎると,骨の成長を促す能力を失ったL型血管に分化するが,そのスイッチを制御するシグナルは明らかではない。本研究で著者らは,成長期の体重増加に伴う機会的負荷が,力学的センサーであるPIEZO1介して骨芽細胞のキナーゼFAM20Cを活性化することを示した。FAM20Cは骨芽細胞においてDMP1をリン酸化し,細胞外への分泌を刺激する。細胞外に分泌されたDMP1は,骨石灰化を抑制するとともに,H型血管の血管内皮増殖因子(VEGF)受容体2のリン酸化を阻害することにより,VEGFのシグナル伝達を抑制する。すなわち,骨芽細胞より分泌されたDMP1は,骨石灰化を促進するのみならず,H型血管をL型血管に変化させることにより骨成長を抑制する。今回発見されたメカニズムは,変形性関節症,骨粗鬆症,骨肉腫など,骨と血管の機能異常に関連する疾患の治療に新たな選択肢を与えるものと期待される。

推薦者コメント

 Dmp1は成熟骨芽細胞・骨細胞に発現し,FGF23産生や骨石灰化に深く関与することが知られるが,これが成長期の終わりに力学的負荷の増大に反応して骨の血管を休止状態に移行させ,骨成長を抑制することが明らかとなった。骨の血管は,単純に組織の酸素化や代謝の維持に関わるだけなく,さまざまな細胞とコミュニケーションし,骨代謝の維持に能動的に関与していることが近年注目されており,本研究はその新たな一面を示したものと捉えられる。骨疾患のみならず癌の骨転移など,さまざまな疾患に対する治療標的となる可能性があり,今後さらなる研究を期待したい。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)