IL-20RBは破骨細胞性ニッチへの腫瘍の反応をもたらし、肺がんの骨転移を促進させる
IL-20RB mediates tumoral response to osteoclastic niches and promotes bone metastasis of lung cancer
著者: | Yunfei He, Wenqian Luo, Yingjie Liu, et al |
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雑誌: | J Clin Invest. 2022; 132:e157917 |
- 破骨細胞
- がん骨転移
- サイトカイン
論文サマリー
上海の肺がん患者を対象としたコホート研究データをもとに、IL-20RB発現が肺がんの骨転移と相関すること、原発巣や他の転移臓器よりも骨転移巣でIL-20RBの発現が高いなどを見出した。また左心室移植によるマウスのがん骨転移モデルにおいて、肺がん細胞株にIL-20RBを過剰発現させると骨転移が亢進し、逆にIL-20RB発現を低下させると骨転移率が低下した。一方でどちらも破骨細胞形成には変化がない。がん細胞は破骨細胞に作用してIL-19(IL-20RBのリガンド)の発現を誘導し、さらにIL-19はIL-20RB陽性がん細胞を刺激してJAK1/STAT3経路を介してがん細胞の増殖を促す。実際にIL-19欠損マウスでは、がん細胞のIL-20RB過剰発現による腫瘍進展が認められない。さらに独自にIL-20RBの中和抗体を作製し、それがマウスの骨転移モデルを有意に抑えることを明らかにした。IL-19–IL-20RB経路は骨転移における破骨細胞による腫瘍促進機構の一つであり、IL-20RBを標的とした骨転移治療の有効性を示した。
推薦者コメント
いわゆる骨転移におけるvicious cycleに関わる新たな経路と言える。一方、IL-19は破骨細胞のみならず単球、マクロファージ、樹状細胞やB細胞などが知られている。骨転移巣でのIL-19の主要産生細胞が破骨細胞である、というin vivoのデータが乏しいのが懸念点ではある。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)