小型細胞外小胞を介して伝搬されるmiR-320eはTAK1を標的にしてOPLLの骨形成を促進する
著者: | Xu C, Zhang Z, Liu N, et al |
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雑誌: | Nat Commun. 2022; 13: 2467. |
- OPLL
- 小型細胞外小胞
- TAK1
論文サマリー
後縦靭帯骨化症(OPLL)は後縦靭帯(PLL)の異所性骨化を特徴とする脊椎疾患である。その発症メカニズムはよく分かっておらず、非手術的治療法の開発が進んでいない。本研究で著者らは、OPLLにおける小型細胞外小胞(sEVs)の機能と作用メカニズムを解析した。非OPLLおよびOPLL患者のPLL細胞の培養上清中sEVsに含まれるmiRNAを包括的にシークエンスしたところ、miR-320eがOPLL由来sEVsに豊富に発現していた。OPLL由来sEVsまたはmiR-320eを正常PLL細胞や間葉系幹細胞(MSC)に作用させると、いずれも骨芽細胞分化を著明に促進し、一方で単球の破骨細胞分化は抑制した。miR-320eの作用メカニズムとしてTAK1が標的として同定され、OPLLモデルであるttwマウスを用いてin vivoでも確認された。これら結果から、OPLL靭帯細胞は骨化促進sEVsを分泌することで、miR-320e/TAK1経路を介して骨化進展に関わる事が明らかとなった。
推薦者コメント
OPLLの原因候補遺伝子ではなくPLLの微小環境変化、すなわちsEVsに着目したユニークな研究であり、骨化進展予防・治療に希望を与える。一方でmiR-320eがPLLやMSCを直接骨芽細胞分化(膜性骨化)に導くストーリーだが、OPLLは内軟骨性骨化様式が大部分を占める事が分かっており、その言及がないのが気になる。同時に本研究ではmiR-320eがMSCの軟骨細胞分化を抑制するデータも提示されており、内軟骨性骨化(OPLL形成)には抑制的(予防的)という逆説も考えられ、miR-320e抑制による治療戦略はさらなる検証が必要だろう。(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科骨関節医学講座・前田 真吾)