CXCL12/CXCR4-Rac1経路が誘導する骨芽前駆細胞の遊走は強直性脊椎炎の病的骨新生に寄与する
著者: | Cui H, Li Z, Chen S, et al |
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雑誌: | Sci Adv. 2022; 8: eabl8054. |
- CXCL12
- osteogenic progenitor cells
- 強直性脊椎炎
論文サマリー
強直性脊椎炎(AS)は病的骨新生に起因する炎症性背部痛と脊椎強直が特徴の慢性炎症性疾患である。本研究で著者らは、CXCL12が骨芽前駆細胞:osteogenic precursor cells (OPCs)の遊走を誘導する事で病的骨新生に決定的に寄与する事を見出した。CXCL12は病的骨新生が起きうる局所に強く発現しており、OPCsがそこに動員されていた。ASマウスモデルにおいて抑制剤AMD3100やCXCR4コンディショナル・ノックアウトによりCXCL12/CXCR4経路を抑制すると、OPCsの遊走とその後の病的骨新生が阻害された。一方、CXCL12強制発現マウスは関節強直の表現型を呈した。さらに、OPCsの遊走とそれ付随する病的骨新生にはRac1が必須であった。これら結果は、ASの異所性骨化におけるCXCL12の新規役割を解き明かし、CXCL12/CXCR4-Rac1経路の抑制により脊椎強直の進行を防ぐ治療戦略の可能性を示唆する。
推薦者コメント
ASの病的骨新生部位にOPCsが侵入するメカニズム、すなわち誘因分子は不明であった。本研究でその分子がCXCL12であり、その産生細胞は初期ではCD45+/CD68+のマクロファージ、内軟骨性骨化が始まる進行期ではCol2a1+細胞である事が明らかとなった。一方で、本研究で用いられている複数のASモデルマウスはあくまで関節炎モデルであり、AS臨床に重要と考えられるgenetic backgroundを全く反映していない事や、CXCL12レベルとASの病勢や関連があるHLA-B27サブタイプとの相関など、臨床エビデンスに乏しく、CXCL12がASの決定的病因分子と結論するにはlimitationが残っている。(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科骨関節医学講座・前田 真吾)