ゴールデンシリアンハムスターにおいてSARS-CoV-2感染は炎症性骨量減少を誘導する
著者: | Qiao W, Lau H, Xie H et al. |
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雑誌: | Nat Commun. 2022; 13: 2539 |
- SARS-CoV-2
- 骨量減少
論文サマリー
重症あるいは慢性的なCoronavirus Disease 2019 (COVID-19)患者において、さまざまな臓器における肺外合併症が報告されている。気道の炎症性疾患が骨代謝に影響し、病的な骨量減少を引き起こすことが知られているにもかかわらず、COVID-19における骨格合併症に関する情報は少ない。本研究において、筆者らは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したゴールデンシリアンハムスターハムスターにおいて経時的に骨量を計測したところ、長管骨と腰椎の海綿骨量が減少していたことを見出した。さらに血中の炎症性サイトカインが、破骨細胞分化を促進させるだけではなく、破骨細胞分化を増強するための骨組織における炎症カスケードを増幅するトリガーにもなっていることを示し、骨量減少がSARS-CoV-2誘導性のサイトカイン調節不全に関連していることを提案した。本研究は、今までのCOVID-19患者においては病的骨量減少は見過ごされていたかもしれず、長期フォローアップの間、注視すべき合併症の一つとなりうる可能性を示唆するものである。病的骨量減少に対する予防治療介入の効果を今後検討することが期待される。
推薦者コメント
感染後4日目の肺においてはSARS-CoV-2に感染している細胞が観察されるが、同時期の骨組織には観察されていないことから、SARS-CoV-2感染後に見られる骨量減少はウイルスによる直接的な影響は少ないと考えられた。筆者らは、血清中の炎症性サイトカインのタンパク質レベルが上昇しており、その上、骨組織中の炎症性サイトカインレベルも上昇していることを見出し、このために破骨細胞分化が亢進していると考えている。骨量減少が感染後2ヶ月にわたって持続していることからCOVID-19回復後の症状の遷延にも何らかの関与があるかもしれず、今後COVID-19患者における病的骨量減少の報告・解析が待たれる。(東京大学医学部附属病院 骨・軟骨再生医療講座・寺島 明日香)