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CSF-1(コロニー刺激因子-1)を産生する内皮細胞と間葉系間質細胞が血管周囲骨髄ニッチの単球を維持する

Colony stimulating factor-1 producing endothelial cells and mesenchymal stromal cells maintain monocytes within a perivascular bone marrow niche
著者:Takuo Emoto, Jessie Lu, Tharini Sivasubramaniyam, et al.
雑誌:Immunity 2022; 55(5), 862-868
  • CSF-1
  • 内皮細胞
  • 間葉系間質細胞
  • 単球

論文サマリー

 本研究は、成体の単球形成におけるCSF-1の役割を明らかにすることを目的として行われた。Ubc-CreERT2;Csf1fl/flマウス成獣においてCsf1を欠失させると、脾臓と骨髄におけるCsf1の発現低下と血中CSF-1レベルの低下を認め、単球の生存・分化・遊走が減少した。単球は骨髄洞様血管の内皮細胞と血管周囲のレプチン受容体陽性間葉系間質細胞(Lepr+ MSC)近くに存在し、骨髄のscRNA-seqデータにおいてCdh5+血管内皮細胞とLepr+間質細胞にCsf1発現を認めた。そこで、血管内皮特異的にCsf1を欠失させたところ(Cdh5-CreERT2;Csf1fl/flマウス)、Ly6C-、Ly6Cint単球が選択的に減少した。Lepr+ MSCと血管内皮の両方でCsf1を欠失させると(Lepr-Cre;Cdh5-CreERT2;Csf1fl/flマウス)、血中と骨髄におけるLy6C-、Ly6Cint、Ly6Chigh単球が減少した。また、Cdh5-CreERT2;Csf1fl/flマウスに敗血症モデルを作製するとLy6C-単球の回復が抑制され、体重減少が亢進した。骨格系細胞特異的Csf1欠失マウスの解析から、骨格系細胞由来のCSF-1が単球の維持に必須でないことも示された。

推薦者コメント

 骨髄の単球は骨髄血管周囲のニッチにおいて維持されており、Ly6C-単球は血管内皮が産生するCSF-1を、Ly6Chigh単球は血管内皮およびLepr+ MSCが産生するCSF-1を必要とすることが示された。全身性のCsf1欠失マウスでは骨格系にも異常を認めることから、造血系への間接的な影響の可能性を除外できなかった。本研究はその点を克服し、成体の単球形成におけるCSF-1の役割を明らかにした点が評価できると思われる。(大阪大学大学院歯学研究科口腔解剖学第一教室・大庭 伸介)