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TOP > Hot paper > 池田 悠希・大庭 伸介

骨髄造血の不適応な自然免疫訓練が炎症性併存疾患の連関にはたらく

Maladaptive innate immune training of myelopoiesis links inflammatory comorbidities
著者:Xiaofei Li, Hui Wang, Xiang Yu et al.
雑誌:Cell 2022; 185(10), 1709-1727
  • 自然免疫訓練
  • 炎症性併存疾患
  • 歯周炎
  • 関節炎

論文サマリー

 本研究では、マウスの歯周炎モデルと関節炎モデルを用い、炎症に起因する骨髄造血の変化(骨髄前駆細胞の変化)が、併存する別の炎症性疾患に影響を与えるかについて検討を行った。絹糸結紮誘導性歯周炎を発症させたマウスでは顆粒球造血の亢進を認めたが、歯周炎を消失させると正常なレベルに戻った。しかしながら、歯周炎を経験したマウスにコラーゲン抗体誘導性関節炎を発症させると、歯周炎未経験マウスと比べて関節炎の症状が悪化した。さらに、歯周炎経験マウスの骨髄(訓練された骨髄細胞)を移植したマウスでは関節炎が悪化した。逆に、関節炎経験マウスの骨髄を移植したマウスでは歯周炎が悪化した。また、歯周炎経験マウスの骨髄前駆細胞ではエピジェネティックな変化が誘導され、歯周炎消失後もその変化は維持されること、そして上記の連関にIL-1βが関与することが示された。

推薦者コメント

 歯周炎と全身の炎症性疾患との連関については以前から報告されてきた(Nat Rev Rheumatol 13:606-20, 2017; Periodontol. 2000 83:7-13, 2020等)。本研究は、歯周炎・関節炎モデルにおいて、骨髄前駆細胞にエピゲノムのレベルで変化をもたらす自然免疫訓練(骨髄造血の変化)がもう一方の炎症性疾患への感受性を高めることを明確に示している。本現象が炎症性併存疾患に共通するメカニズムであることが示唆され、治療標的となりうる可能性が示された。(大阪大学大学院歯学研究科口腔解剖学第一教室・池田 悠希・大庭 伸介)