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コリン作動性神経-骨インターフェイスが生後の成長や運動における骨形成を促進する

A cholinergic neuroskeletal interface promotes bone formation during postnatal growth and exercise
著者:Gadomski S、Fielding C、García-García A et al.
雑誌:Cell Stem Cell. 2022 Apr 7;29(4):528-544.e9.
  • Cholinergic switch
  • コリン作動性神経
  • 骨形成

論文サマリー

 ノルアドレナリン作動性交感神経による骨代謝制御は過去に報告されているが、骨でのコリン作動性シグナルによる制御に関しては大部分が未解明なままだった。本論文では、IL-6により交感神経のCholinergic switch(アドレナリン作動性からコリン作動性へ変化する現象)が誘導され、そのコリン作動性神経が骨形成を正に制御していることを見出している。マウスにおいてCholinergic switchが起こる生後に6-OHDA処理による交感神経除去を行うと骨のコリン作動性神経の減少が認められたこと、及び、交感神経が蛍光を発するレポーターマウスの骨でコリン作動性神経マーカーとレポーターの蛍光がマージしたことから、骨における交感神経を起源とするコリン作動性神経の存在を検出した。また、IL-6阻害剤処理、もしくは、IL-6欠損マウスにおいてコリン作動性神経の減少が認められたことから、IL-6によりCholinergic switchが誘導されることが示唆された。更に、コリン作動性神経の発生や生存に重要なGFRα2(Neurturin受容体)を欠損するマウスでは骨におけるコリン作動性神経の減少を伴った骨量の低下が起こっており、この時、骨細胞の形態や細胞間ネットワークの異常が認められた。この表現型はCholinergic switchが起こる時期のマウスに6-OHDA処理を行った場合にも認められた。極めて面白いことに、運動による負荷で骨量の増加が起こる際、コリン作動性神経の増加が起こっており、それらはIL-6阻害剤処理や交感神経除去により抑制されたことから、交感神経のCholinergic switchが重要であることがわかった。

推薦者コメント

 本研究より、骨におけるコリン作動性交感神経の発生メカニズムとそれによる骨形成の制御メカニズムが明らかになった。未だ不明な点が多い運動といったメカニカルストレスによる骨量増加の機序の一端を示している点も興味深い。しかしながら、GFRα2欠損マウスの表現型が雌雄で異なる理由、GFRα2欠損の影響が骨吸収には表れない理由、Cholinergic switchが起こる生後に交感神経を除去した場合やGFRα2を欠損させた場合には海綿骨に加え皮質骨にも影響が出る一方で運動による影響は海綿骨のみで皮質骨には表れない理由は明確にされておらず、複雑な制御メカニズムの存在が考えられる。神経による骨代謝制御について、今後の研究展開からますます目が離せない。(岡山理科大学獣医学部獣医実験動物学講座・梶川 修平・伊豆 弥生)