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SP7のネオモルフィック変異は、SP7の配列特異性を変化させることで高代謝回転型骨系統疾患の発症を誘導する

A neomorphic variant in SP7 alters sequence specificity and causes a high-turnover bone disorder
著者:Lui J, Raimann A, Hojo H, et al
雑誌:Nat Commun. 2022; 13: 700.
  • 骨芽細胞
  • SP7
  • ネオモルフィック変異

論文サマリー

 SP7/Osterixは、骨芽細胞の成熟や骨形成に重要な転写因子である。本研究において、著者らは頭蓋骨癒合症や頭蓋骨過骨症、長管骨の脆弱性を有する患者において、SP7のネオモルフィック変異 (=新規機能獲得型変異) c.926C>G:p.S309Wが生じていることを見出した。この患者では、骨芽細胞分化が亢進する一方で、骨の石灰化が抑制されていた。また、SP7 S309Wノックインマウスの解析を行ったところ、SP7ノックアウトマウスとは異なる表現型が観察された。さらに著者らは、この変異により、SP7の配列特異性がATリッチモチーフからGCボックス配列に変化することを明らかにした。また、この変化が、Col1a1や内在性Sp7の発現増加や、石灰化関連遺伝子の発現減少などの、異常な遺伝子発現プロファイルに寄与することがわかった。本研究により、DNA配列特異性を変化させるネオモルフィック変異が骨系統疾患の発症メカニズムに関与することが明らかとなった。さらに、SP7のATリッチモチーフに対する結合特異性が、正常な骨芽細胞分化において極めて重要であることが生体レベルで示された。

推薦者コメント

 転写因子の遺伝子変異は、疾患の発症要因となりうる。STAT1STAT3の機能獲得型変異 (Zheng J. et al. Eur. J. Immunol. 2015; 45: 2834–2846)などがその代表例である。本研究では、SP7のネオモルフィック変異による、転写因子の配列特異性の変化が骨系統疾患の発症メカニズムに関与することが示された。また、DLXタンパクとの相互作用の変化が、SP7の配列特異性の制御に重要であることが示唆されている。今後、本疾患の治療法開発に向けた、さらに詳細な分子メカニズムの解明が期待される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・大角 竜馬・檜井 栄一)