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肝-骨連関の異常は肝性骨異栄養症の病態進行に寄与する

Defects in a liver-bone axis contribute to hepatic osteodystrophy disease progression
著者:Lu K, Shi T, Shen S, et al
雑誌:Cell Metab. 2022; 34(3): 441-457.
  • 肝性骨異栄養症
  • 肝-骨連関
  • LCAT

論文サマリー

 肝性骨異栄養症 (Hepatic osteodystrophy: HOD)は、骨量減少を引き起こす代謝性骨疾患である。HODは慢性肝疾患と関連することが知られている。著者らは、HOD発症時に、肝臓におけるPP2Acα発現の上昇が、ヘパトカインの1種であるLCAT (レシチンコレステロールアセチルトランスフェラーゼ)の発現減少を誘導することを見出した。また、LCATの機能低下は、HODモデルマウスの骨量減少を著しく悪化させることが明らかとなった。くわえて、著者らは、生体のコレステロールが骨芽細胞および破骨細胞の機能制御に関与することを実証した。また、HODモデルマウスにおいて、LCATは骨組織から肝臓へのコレステロール輸送を促進することで、肝機能や肝臓の線維化を改善させたることが示された。本研究から、PP2Acα-LCAT軸を介した肝-骨連関が、HODの治療法開発における重要な標的となることが示唆された。

推薦者コメント

 これまでに、骨粗鬆症や肝疾患の早期診断に利用可能な多数のバイオマーカーが同定されてきている。しかしながら、それらのマーカーを用いてHODを診断することは困難であった (Barbu et al., Acta Clin. Croat. 2017; 56: 512-525; Eastell et al., Nat. Rev. Dis. Primers 2. 2016: 16069)。本研究により、肝-骨連関を媒介するPP2Acα-LCAT軸がHODの新規治療標的となることが示唆された。PP2Acα-LCAT軸は、HODの病態を反映する新規バイオマーカーとしても機能することが期待される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・冨沢 茜・檜井 栄一)