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力学的負荷はDdah1を介したADMA加水分解を促進し骨形成を促進する

Mechanical force promotes dimethylarginine dimethylaminohydrolase 1-mediated hydrolysis of the metabolite asymmetric dimethylarginine to enhance bone formation
著者:Xie Z, Hou L, Shen S, et al
雑誌:Nat Commun. 2022; 13: 50.
  • 力学的負荷
  • 骨芽細胞
  • Ddah1

論文サマリー

 力学的負荷は、骨の発生とリモデリングに重要であることが知られている。本論文では、力学的負荷が骨芽細胞におけるdimethylarginine dimethylaminohydrolase 1(Ddah1)の発現を制御することで、代謝産物であるasymmetric dimethylarginine(ADMA)の産生調節を行うことを見出している。ヒト患者を対象とした大規模臨床試験の結果、Ddah1の-394 4 N del/ins遺伝子多型ならびに血清ADMA濃度高値は骨密度と負の相関を示しており、Ddah1の全身性または骨芽細胞特異的欠損マウスにおいても血清ADMA濃度上昇と骨形成の低下が認められた。機械的刺激は骨芽細胞系細胞でTAZ/SMAD4を介したDdah1の転写を促進しADMA濃度を制御すること、一方で、骨芽細胞系細胞でDdah1を欠損させると、機械的刺激で誘導される骨形成が低下することが明らかとされた。これらの結果から、力学的負荷はADMAを下方制御することで骨形成促進に寄与する可能性が示唆された。

推薦者コメント

 これまでNOSの欠失が骨芽細胞数や骨形成、骨石灰化度低下に寄与すること、また、NOSで制御されるNOが力学的負荷による骨形成作用に寄与する可能性が報告されてきた。本研究により、NOSの競合阻害剤であるADMAが、NOS/NO同様に力学的負荷を介した骨代謝調節に寄与することが明らかとなった。ADMAは、腎不全患者で血中濃度が上昇し血管障害の危険因子になることが知られていることから、今後、腎性骨症への寄与などさらなる解析が望まれる。(北海道大学大学院歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)