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シングルセル解析により冠状縫合での骨発生成長におけるHhipの役割を解明

Single-cell analysis identifies a key role for Hhip in murine coronal suture development
著者:Holmes G, Gonzalez-Reiche A, Saturne M, et al
雑誌:Nat Commun. 2021; 12: 7132.
  • 冠状縫合
  • Hhip
  • シングルセル解析

論文サマリー

 頭蓋顔面の発達は、各頭蓋骨の間に縫合が形成・維持されることに依存する。縫合部では、各骨の縁に沿った骨形成前線で成長が起こり、縫合部の間葉組織が隣接する骨を隔てている。本研究では、胎生期野生型マウスの冠状縫合でシングルセルRNA-seq解析を行い、同部位に存在する細胞集団を明らかにした。マウス冠状縫合では、E16.5で7個、E18.5で9個の細胞集団が存在し、間葉細胞、骨原性細胞、および関連細胞集団から構成されていた。また、ヘッジホッグシグナルを阻害するHhipの発現は、神経提由来の他の頭蓋縫合とは異なる間葉系集団の存在を示していた。新生児期のHhip発現細胞集団を追跡すると、その子孫細胞は冠状縫合部に留まり、頭蓋骨の成長に寄与していることが示された。E18.5 Hhip-/-マウスの冠状縫合部では骨形成前線が密着しており、野生型マウスと比較してヘッジホッグシグナルの増加と縫合部の間葉組織の消失が認められた。以上より、Hhipは冠状縫合における正常発生に必須であることが示された。

推薦者コメント

 前頭骨はその他の頭蓋骨とは発生由来が異なるが(前頭骨は神経堤由来、その他の頭蓋骨は中胚葉由来)、これら頭蓋骨における縫合を起点とした発生・成長機序については未だ不明な点が多い。筆者らは前頭縫合を用いた先行研究との比較で、冠状縫合特異的なHhip陽性間葉系細胞集団が冠状縫合部における頭蓋骨発生・成長に必須であることを見出しており、本研究が頭蓋顔面発生機序の全容解明につながることが期待される。(北海道大学大学院歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)