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精巣上体脂肪組織におけるマクロファージが骨組織の恒常性を制御するオステオポンチンを分泌する

Macrophages in epididymal adipose tissue secrete osteopontin to regulate bone homeostasis
著者:Dai B, Xu J, Li X, et al
雑誌:Nat Commun. 2022; 13: 427.
  • マクロファージ
  • 精巣上体脂肪組織
  • オステオポンチン

論文サマリー

 精巣上体白色脂肪組織(eWAT)は,高脂肪食(HFD)誘発肥満における器官・組織代謝制御サイトカインを多く分泌するが,骨代謝への影響についてはよく分かっていない.この研究では,マウスeWATに存在するマクロファージがオステオポンチンの主たる提供源で,選択的に骨髄へ循環するとともに,破骨細胞の活性化により骨基質分解を促進し,骨髄脂肪細胞から放出される脂肪滴を貪食する骨髄由来マクロファージ(BMDMs)を調節することが分かった.一方,オステオポンチン調節で誘導される乳酸の蓄積は,リソソームのATP6V0d2でエネルギー再生を制限することにより,BMDMsにおける脂肪分解と破骨細胞形成を阻害していた.そして,eWATの外科的切除と,マクロファージを枯渇可能なクロドロネートリポソーム,または,抗オステオポンチン中和抗体の局所投与の併用により,HFD誘発性骨喪失の緩解が認められることが分かった.

推薦者コメント

 リソソームは細胞内外の分子を分解するオルガネラで,ATP6V0d2は液胞型ATPaseのサブユニットであり,破骨細胞やマクロファージにおける機能や分化調節に重要であることが報告されている.今回はeWATのマクロファージに着目しているが,筆者らも述べているように,この研究成果は,肥満に関連する骨疾患を軽減する治療戦略開発の基盤構築に寄与できたと考えられる.(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)