老化した免疫細胞はグランカルシンを放出し、骨の老化を促進する
著者: | Chang-Jun Li, Ye Xiao, Yu-Chen Sun, et al |
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雑誌: | Cell Metab. 2021; 33:1957-1973 |
- 老化
- 骨髄ストローマ細胞
- 好中球/マクロファージ
論文サマリー
近年老化研究では細胞老化随伴分泌現象(SASP)が話題であるが、著者らは若齢と加齢ラットの骨髄液中タンパク質を網羅解析することで、加齢骨髄で発現量が高い分泌因子としてグランカルシン(GCA)を見出した。リコンビナントGCAを骨髄内投与すると、骨量低下や骨形成低下、骨芽細胞減少、脂肪細胞増加といった加齢様骨表現型を示した。シングルセルRNA-seqデータなどの解析から、GCAは加齢時の好中球やM1様マクロファージで高く産生され、これらの免疫細胞は炎症や老化に関連する遺伝子プロファイルを示した。実際これらの免疫細胞をエンドトキシンで刺激することで、GCA発現が誘導されることから、加齢に伴う炎症病態がGCA産生に関わると示唆された。さらにLysM-Creを用いて好中球・マクロファージ特異的GCA遺伝子欠損マウスを作製したところ、上記のような骨の加齢変化が抑えられた。GCAはPlexin-b2を介して骨髄間葉系前駆細胞に作用し、骨芽細胞分化を抑制し脂肪細胞分化を亢進させる。さらにGCAに対する中和抗体投与により加齢に伴う骨変化を改善できた。以上より、加齢に伴い出現するGCA産生性好中球やマクロファージが骨老化を進めることが示された。
推薦者コメント
GCAがPlexin-b2下流のFAKやYAP、TAZのリン酸化を阻害するというデータを示しているものの、この論文では骨芽細胞分化抑制と脂肪細胞分化亢進を説明付けできる詳細な分子経路まで提示できておらず、少し物足りない感が否めない。GCA産生性好中球やM1様マクロファージが加齢に伴い出現するのであれば、骨髄に限らず、様々な臓器での加齢変化にも関わる可能性もあり、今後の展開が期待される。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)