強直性脊椎炎における骨癒合抑止を阻止するための、軟骨細胞を標的とした制御
著者: | Fenli Shao, Qianqian Liu, Yuyu Zhu, et al |
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雑誌: | Nat Commun. 2021; 12:6540 |
- 強直性脊椎炎
- 軟骨細胞
- BMPシグナル
論文サマリー
異所性骨形成による骨癒合は強直性脊椎炎の臨床的特徴であるが、そのメカニズムはよく明らかにされていない。著者らは偶然にも、CD4-CreマウスとSHP2遺伝子(Ptpn11) floxマウスを交配させたコンディショナルノックアウト(CKO)マウスが、後弯症や関節炎、骨癒合といった強直性脊椎炎の症状を自然に発症することを見つけた。また、このCD4-Cre Ptpn11 flox CKOマウスでは成長板軟骨層の肥厚が認められた。CD4-CreはT細胞特異的にCreを発現するマウスとして一般的に汎用されているが、驚くべきことにCD4-Cre Ptpn11 flox CKOマウスの表現型はT細胞異常に起因しない。一方、成長板軟骨の前肥大・肥大軟骨細胞層でCD4発現が認められ、これらの軟骨細胞でのSHP2欠損により軟骨細胞増殖・分化が誘導されることがわかった。また、SHP2発現が低下した軟骨細胞ではBMP6発現が上昇し、骨髄間葉系幹細胞に作用するとSmad1/5のリン酸化を誘導したことから、BMP6-Smad1/5シグナルの亢進が異所性骨形成の原因と考えられた。さらにヘッジホッグシグナル伝達阻害薬ソニデギブの投与により軟骨形成を阻害させることで、CD4-Cre Ptpn11 flox CKOマウスの強直性脊椎炎様症状が抑制された。以上より、ソニデギブによる軟骨細胞を標的にした制御が強直性脊椎炎に対する有効な治療法となることが示唆された。
推薦者コメント
これまでにもCD4-Creマウスを使用した結果、軟骨細胞異常に起因する表現型が報告されており、CD4-Cre Ptpn11 flox CKOマウスが軟骨肉腫を発症するという報告もある(Miah, Front Immunol, 2017)。ヒトの強直性脊椎炎では、何かしらの異常でSHP2欠損に類似する細胞変化が生じるのかもしれず、その詳細な解析が今後の課題であろう。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)