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骨細胞の樹状突起形成はSp7とその標的遺伝子osteocrinにより制御される

Control of osteocyte dendrite formation by Sp7 and its target gene osteocrin
著者:Wang JS, Kamath T, Mazur CM, et al.
雑誌:Nat Commun. 2021; 12: 6271
  • 骨細胞
  • 神経ネットワーク
  • トランスクリプトーム解析

論文サマリー

 骨芽細胞の一部は骨基質に埋没し,樹状突起を持つ骨細胞となる。しかし,骨細胞への分化過程で樹状突起がどのような機構により形成されるのかは明らかではない。著者らは,骨芽細胞・骨細胞特異的Sp7排除マウス(Dmp1-Cre;Sp7fl/fl)を作成し,このマウスでは樹状突起の形成に欠陥が生じることを見出した。Sp7の標的遺伝子と結合領域を探索した結果,さまざまな遺伝子が樹状突起の形成を誘導する目的で転用されていることが明らかとなった。Sp7の標的遺伝子の一つであるosteocrinは樹状突起の形成を促進し,Dmp1-Cre;Sp7fl/flマウスで見られる樹状突起の形成不全を改善した。シングルセルRNA-seq解析の結果,Sp7の欠失により骨細胞の成熟が妨げられることが明らかとなった。Sp7依存性の骨細胞ネットワークはヒトの骨疾患と関連性があり,さらにSP7R316C 変異を有する患者では骨細胞の形態に欠陥が認められた。骨細胞で確認されたSp7の標的遺伝子は神経細胞でも豊富に認められ,骨細胞と神経細胞のネットワーク形成における類似性が示唆された。以上の結果より,骨細胞への分化におけるSp7とその標的遺伝子osteocrinの役割が明らかとなり,骨細胞の成熟を調節する経路がヒトの骨疾患にも関わることが示された。

推薦者コメント

 Sp7(osterix)は骨芽細胞への分化に必須な転写因子として知られるが,これが骨細胞への分化と樹状突起の形成にも関わっていることが明らかとなった。骨細胞と神経細胞でSp7の標的遺伝子に高い相同性が認められた点は,従来指摘されている両者の深い関わりを改めて示すものといえる。Sp7の標的遺伝子であるosteocrinは近年,骨芽細胞での発現が荷重負荷により刺激され,これが骨形成の促進をもたらすことが示されている。メカノセンサーとして中心的な役割を担う骨細胞において,Sp7とosteocrinが樹状突起の形成のみならず機械的刺激に対する応答にも関与しているのか,今後の研究展開が期待される。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)