日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 駒場 大峰

神経系は骨細胞のニューロペプチドY分泌を介して骨量と骨髄内脂肪量の不均衡を誘導する

Neuronal Induction of Bone-Fat Imbalance through Osteocyte Neuropeptide Y
著者:Zhang Y, Chen CY, Liu YW, et al.
雑誌:Adv Sci (Weinh). 2021; 8: e2100808
  • ニューロペプチドY
  • 自律神経
  • 骨細胞

論文サマリー

 骨髄間葉系幹細胞/間質細胞(BMSCs)の骨芽細胞から脂肪細胞への分化スイッチは,加齢および閉経に関連する骨量減少と骨髄内の脂肪量の増加に関与することが知られる。著者らは,骨細胞によるニューロペプチドY(NPY)産生が加齢や骨粗鬆症とともに増加し,これがBMSCsに作用し脂肪組織の生成を促進するとともに骨形成を抑制することを見出した。骨細胞特異的Npy排除マウス(Dmp1-iCre;Npyfl/fl)は骨量増加を示すとともに,加齢や卵巣摘出に伴う骨量と骨髄内脂肪量の不均衡が軽減した。骨細胞によるNPY産生は自律神経により制御され,Dmp1-iCre;Npyfl/flマウスでは交感神経系により誘導されるBMSCsの運命決定と骨量と骨髄内脂肪量の均衡維持が阻害された。自律神経の調節因子であるγ-オリザノールをマウスに投与すると,骨形成の亢進とともに,加齢や卵巣摘出に伴う骨細胞のNPY産生亢進と骨髄内脂肪量の増加が軽減したが,同様の現象はDmp1-iCre;Npyfl/flマウスでは認められなかった。本研究により,自律神経が骨細胞のNPY産生を制御することにより骨代謝をコントロールするという,神経系の新たな制御様式が示された。

推薦者コメント

 神経系が骨代謝を調節する機構としては,レプチンが中枢神経系を介して骨形成を抑制することが知られるが,本研究により自律神経が骨細胞のNPY産生を調節することにより骨芽細胞から脂肪細胞への分化スイッチを制御するという新たな機構が明らかとなった。神経細胞と骨細胞は,ともに樹状突起を伸ばしネットワークを形成するという共通点を有するが,両者は骨組織内で直接コンタクトしないことから,骨基質の組織間液を介して作用しているものと想定される。骨細胞がNPYを産生することを含め,骨細胞と神経細胞との深い関わりが改めて示された研究である。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)