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骨髄類洞内皮は赤血球の最終分化と網状赤血球の成熟化を制御する

Bone marrow sinusoidal endothelium controls terminal erythroid differentiation and reticulocyte maturation.
著者:Heil J, Olsavszky V, Busch K, et al
雑誌:Nat Commun. 2021; 12(1):6963.
  • 骨髄類洞内皮
  • 赤血球
  • 骨髄ニッチ

論文サマリー

 骨髄には、造血を司る微小環境(ニッチ)が存在する。これまで、骨髄間質細胞を始めとした種々の骨髄画分が造血ニッチの役割を担うことが報告されている。今回著者らは、骨髄類洞内皮細胞(BM-SEC)が、赤血球の産生に働くニッチとして機能することを見出した。BM-SEC特異的に古典的Wntシグナル伝達経路を活性化したマウス(Stab2-iCreF3tg/wt; Ctnnb1(Ex3)fl/wt:Ctnnb1OE-SEC)では、上記の結論を示唆する以下の表現型が認められた。(1) 赤血球の最終分化と成熟化が減弱し、重度の貧血と生存率の低下が認められた。(2) BM-SECにおいて通常は発現が低い細胞外マトリックスの上昇と遺伝子プロファイルの変化から、BM-SECの分化が抑制されていることが示された。(3) 赤血球の分化を負に制御するFGF23 (J Biol Chem. 2014; 289(14):9795)、および血管の分化や安定性に関与するDKK2 (J Clin Invest. 2011; 121(5):1882)の発現がBM-SECで上昇していた。(4) 皮質骨の菲薄化が認められた。

推薦者コメント

 Ctnnb1OE-SECマウスは骨量が低下する。この表現型は、血中FGF23の上昇にともなう低リン血症、あるいは骨量維持に働く血管系の異常などが原因として考えられるが、そのメカニズムに関しては言及されていない。また、FGF23がin vitro培養系では、赤血球の分化、増殖、成熟化、生存のどれにも影響を及ぼさないことを示している。すなわち、本論文では、BM-SECの赤血球ニッチとしてのメカニズムに関しては結論が出ておらず、今後のさらなる研究成果が待たれる。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)