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Wnt1-G177C変異は、骨形成不全症XV型において、骨格の完全性を障害する

The WNT1G177C mutation specifically affects skeletal integrity in a mouse model of osteogenesis imperfecta type XV.
著者:Vollersen N, Zhao W, Rolvien T et al
雑誌:Bone Res. 2021; 9:48.
  • 骨形成不全症XV
  • Wnt1
  • 骨質

論文サマリー

 骨形成不全症XV型(OI-XV)は、Wnt1のホモあるいはヘテロ変異によって発症する。著者らは、脳の発達障害を持たないWnt1G117C変異に着目し、このOI―XVモデルマウスを解析した。Wnt1G177C / G177Cマウスは生存可能であり、24週齢のWnt1G177C / G177Cマウスは易骨折性を示した。この骨の脆弱性は、骨量の減少だけなく、骨質の低下によって引き起こされる可能性が示された。副甲状腺ホルモン投与またはスクレロスチンが結合できないLRP5活性化変異を導入は、G177Cホモ変異マウスにおいて、骨量を増加させた。この結果は、OI-XVの治療にPTHの投与あるいはSclerostin抗体の投与が有効である可能性を示唆している。さらにトランスクリプトミクス分析により、骨芽細胞へのWNT1の短期処理は、WNT達標的遺伝子の発現だけでなく、細胞外マトリックス修飾因子の発現も誘導することを明らかにした。この結果は、WNT1のシグナルが骨質も調節することを示した。

推薦者コメント

 Wnt1の変異によって骨形成不全症が発症することは、知られていたが、脳の発達障害を持たない変異に着目した点は、脳神経系が骨に与える影響を除外できることから、Wnt1の骨組織での役割をクリアに解析できるモデルとして、非常に興味深い。また、PTHやスクレロチン抗体がXV型OIに有効な可能性が示されるとともに、Wnt1以外のWntがPTHや抗スクレロチン抗体による骨形成作用に機能していることを示唆している。(松本歯科大学・総合歯科医学研究所・硬組織機能解析学・小林 泰浩)