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人工的に修飾された破骨細胞は、異所性骨を除去するための治療材料である

Engineered osteoclasts as living treatment materials for heterotopic ossification therapy.
著者:Jin W, Lin X, Pan H et al
雑誌:Nat Commun. 2021; 12: 6327.
  • 破骨細胞
  • テトラサイクリン
  • 異所性骨

論文サマリー

 破骨細胞(OC)は、骨ミネラルを脱灰することができる唯一の細胞である。 通常のOCは、分化や移動が制限されており、骨や石灰化軟骨の吸収に限られている。したがって、異所性骨化(HO)などの石灰化組織の除去は、通常の破骨細胞では限界がある。HOは、軟組織内で形成された骨組織であり、石灰化組織を除去するための方法はない。OCをテトラサイクリン(TC)で修飾して、カルシウムミネラルへの幅広い親和性により異所性石灰化組織を標的とし付着する能力が強化された人工OC(TC-OC)を生成する化学的アプローチを開発した。通常のOCとは異なり、TC-OCは生体外と生体内の両方でHOを効果的に除去した。 この成果は、改変されたOCを使用することで、HOを消失できることを示しており、細胞治療の「生きた治療薬」として細胞を操作する可能性を秘めている。

推薦者コメント

 破骨細胞の膜タンパク質にテトラサイクリンを架橋して、破骨細胞の骨ミネラルへの親和性を高める方法は、かなりユニークである。BMP2による異所性骨では、骨組織が形成されると、破骨細胞が形成される。しかし、腱切除モデルやMhkKOマウスで誘導される腱の石灰化にも、TC-OC投与の効果が認められており、興味深い。生体内で投与したTC-OCの分布など詳細な組織学解析が望まれる。(松本歯科大学・総合歯科医学研究所・硬組織機能解析学・小林 泰浩)