日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 平岩 茉奈美・檜井 栄一

RSPO3はマウスおよびヒトにおいて骨量の調節や骨折リスクに関与する

RSPO3 is important for trabecular bone and fracture risk in mice and humans.
著者:Nilsson KH, Henning P, El Shahawy M, et al
雑誌:Nat Commun. 2021; 12(1):4923.
  • 骨折
  • RSPO3
  • 骨芽細胞

論文サマリー

 Wntシグナル活性化因子R-スポンジン-3 (RSPO3) は、骨折リスク関連遺伝子であることが報告されている。しかしながら、RSPO3がどのようなメカニズムを介して骨折リスクと関連しているのかについて、詳細は不明である。本研究において、著者らはヒト遺伝学的解析により、RSPO3の発現上昇や海綿骨の骨塩量増加、また、遠位前腕骨の骨折リスクの低下に関与する一塩基多型 (SNP) を見出した。さらに、RSPO3が骨組織中では骨芽前駆細胞や骨芽細胞において発現することや、骨芽細胞が骨組織中におけるRSPO3の主要な供給源であることを明らかにした。くわえて、遺伝子改変マウスを用いた解析から、RSPO3はWnt/βカテニン経路を介した細胞自律的な作用によって、骨芽細胞の増殖や分化を亢進させることが観察された。本研究により、RSPO3が骨強度や骨密度を制御することで、骨折リスクに関与する可能性が示された。

推薦者コメント

 本研究により、骨折リスクに関連するRSPO3のSNPや、RSPO3による骨芽細胞の機能制御メカニズムが明らかになった。近年、世界レベルでの高齢化の進行に伴う、骨粗鬆症性骨折患者の増加が公衆衛生上の問題となっている。これまでに、ゲノムワイド関連解析 (GWAS) により、ESR1SOSTといった複数の骨折関連遺伝子が特定されている (Trajanoska K, et al. BMJ., 2018; 362: k3225)。今後、さらに骨折関連遺伝子の同定が進むことで、骨折発症メカニズムの包括的な理解や、骨折に対する新規予防・治療法の開発が期待される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・平岩 茉奈美・檜井 栄一)