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TOP > Hot paper > 平岩 茉奈美・檜井 栄一

出生後の骨形成における骨格前駆細胞の追跡

Tracing the skeletal progenitor transition during postnatal bone formation
著者:Shu HS, Liu YL, Tang XT, et al
雑誌:Cell Stem Cell. 2021; 6:S1934-5909(21)00347-7.
  • 骨格前駆細胞
  • 骨芽細胞の供給源
  • フェイトマッピング解析

論文サマリー

 骨の発達や維持には、様々な種類の骨格前駆細胞による骨芽細胞の供給が極めて重要である。しかしながら、現在までに、骨格前駆細胞における細胞ヒエラルキーや、骨芽細胞の供給源に関する時空間的な理解には至っていない。本研究では、Cre/loxPシステムとDre/Roxシステムを組み合わせた、骨格前駆細胞のフェイトマッピング解析を実施した。その結果、成体期以前では軟骨細胞が、成体期以降ではLepr陽性骨髄間質細胞 (BMSCs) が、それぞれ骨芽細胞を供給することが明らかとなった。また、この骨芽細胞の供給源の変化は、骨幹部から始まり、次いで骨端部で生じることが観察された。さらに、周産期の軟骨細胞、あるいは成体期のLepr+ BMSCにおいて、Runx2を欠損させたところ、骨の長軸方向の伸長や、骨の肥厚がそれぞれ抑制された。くわえて、続く実験により、骨修復時には成体期のLepr+ BMSCが、強制走行試験による生理的刺激下では周産期の軟骨細胞が、それぞれ骨芽細胞の主な供給源となることが示された。本研究により、骨格前駆細胞による骨芽細胞の供給源が経時的に変化することで、骨の成長や維持・修復が効率良く行われる可能性が示唆された。

推薦者コメント

 本研究により、骨格前駆細胞による骨芽細胞供給の時空間的機序が明らかとなった。さらに近年、骨格前駆細胞として、オステオレクチン陽性Lepr+ BMSCが同定されるなど (Shen B et al. Nature., 2021; 591: 438-444) 、骨格前駆細胞の細胞ヒエラルキーに関する分子理解も進展しつつある。将来、骨の発達や維持における骨格前駆細胞の全容が解明されることで、骨・軟骨疾患の病態理解や再生医療のさらなる発展に繋がることが期待される。(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室・平岩 茉奈美・檜井 栄一)