日本骨代謝学会

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TOP > Hot paper > 長谷川 智香

頭蓋骨および椎骨骨髄は、髄膜と中枢神経実質に存在する骨髄細胞の貯蔵庫である

Skull and vertebral bone marrow are myeloid cell reservoirs for the meninges and CNS parenchyma
著者:Cugurra A, Mamuladze T, Rustenhoven J et al
雑誌:Science. 2021; 373 (6553):eabf7844.
  • 頭蓋骨髄
  • 髄膜マクロファージ
  • ケモカイン

論文サマリー

 組織中の骨髄細胞は、通常血管系から供給を受けるが、脳の損傷時には、頭蓋骨骨膜から脳硬膜への接続路(微細血管)により頭蓋骨骨髄細胞が脳硬膜および脳実質へ移動する可能性が示唆されている。本研究は、正常状態においても、頭蓋および脊椎の骨髄ニッチから脳・脊髄硬膜や実質へ骨髄細胞(単球・好中球)が浸潤することを見いだしている。また、骨髄細胞の移動には、ケモカイン受容体(CCR1, CCR2)に作用するケモカイン(CCL2, 6, 8, 12)が関与する可能性が示唆された。さらに、頭蓋骨移植モデルやX線照射モデルにおいても、頭蓋骨骨髄の単球が、血管系を経ずに近接する脳脊髄硬膜へ誘導されること、これら骨髄由来の単球が、髄膜マクロファージに分化することを明らかにしている。なお、同部位に局在する頭蓋・脊椎骨髄由来の骨髄細胞は、血管由来の骨髄細胞とは異なる遺伝的背景を示し、炎症や損傷により脳脊髄の実質へ浸潤する可能性が示唆された。以上より、頭蓋・脊椎骨髄由来の骨髄細胞は、正常時より脳硬膜下に存在し、脳障害時の免疫応答の調整に寄与している可能性が推測された。

推薦者コメント

 2018年に頭蓋骨骨髄と脳硬膜を結ぶ微細血管が発見され、脳損傷時における骨髄細胞(好中球)の遊走が報告された(Nat Neurosci. 2018; 21, 1209-1217, Nature. 2018; 560, 55-60)。本研究は、正常時においても、頭蓋・脊椎骨髄が脳・脊髄硬膜へリクルートされ、中枢神経系の免疫応答に寄与することを明らかとした、大変興味深い報告である。本研究成果は、中枢神経系における免疫系細胞の機能や炎症性神経疾患の病因解明につながることが期待される。(北海道大学歯学研究院硬組織発生生物学教室・長谷川 智香)