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抗シトリルリン化タンパク抗体陽性・陰性関節リウマチにおける免疫細胞のシングルセル解析

Single-cell sequencing of immune cells from anticitrullinated peptide antibody positive and negative rheumatoid arthritis
著者:Wu X, Liu Yi, Jin S, et al
雑誌: Nat Commun. 2021; 12: 4977.
  • 抗シトリルリン化タンパク抗体
  • 関節リウマチ
  • シングルセル解析

論文サマリー

 関節リウマチ(RA)患者における抗シトリルリン化タンパク抗体(ACPA)の有無や,それに関連した相違部分は,未知で多様な免疫病理学的メカニズムを有する疾患の不均一性があることを意味している.本研究では,ACPA陽性RA患者とACPA陰性RA患者の末梢血または滑膜組織から採取されたCD45陽性造血系細胞がシングルセルRNA-seqによりプロファイリングされ,RAサブタイプの病態形成に関与する免疫細胞のサブセットが同定された.ACPA陽性RAと比較してACPA陰性RAの骨髄細胞サブセットではCCL13,CCL18,MMP3の増大が認められ,滑膜の免疫細胞に異常が認められた.また,ACPA陰性RA患者の滑膜組織ではHLA-DRB5発現消失と細胞傷害性関連遺伝子の発現低下が認められた.さらにHLA-DR15 のハロタイプDRB1/DRB5は,治療未経験RA患者集団において,ACPA陽性RAの発生リスクを増大させていた.ACPA陰性RAの滑膜組織では,CCL13 とCCL18陽性免疫細胞の浸潤が認められた.

推薦者コメント

 著者らも述べているが,シングルセルRNA-Seqと免疫染色により,ACPA陽性RA患者とACPA陰性RA患者との間でCCL13とCCL18陽性細胞浸潤が異なっていたことは,RA患者であってもACPAの有無で治療の標的対象が異なることを示唆している.また,両者における様々な遺伝子的およびタンパクレベルでの違いは,免疫病理学的観点に基づいて,病態形成が異なると考えられた.(北海道大学歯学研究院硬組織発生生物学教室・黒嶋 伸一郎)