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826,690名の変形性関節症を遺伝学的に解読する

Deciphering osteoarthritis genetics across 826,690 individuals from 9 population
著者:Boer CG, Hatzikotoulas K, Southam L, et al
雑誌:Cell. 2021; 184: 4784-4818.e17.
  • 変形性関節症
  • 機能ゲノミクス
  • ゲノムワイド関連研究(GWAS)のメタ分析

論文サマリー

 変形性関節症は世界中で3億人以上に影響を与えている疾患である.この多施設コホート研究では,826,690名(このうち177,517名が変形性関節症患者)によるゲノムワイド関連解析の(GWAS)メタ分析が行われ,11の表現型に独立した100の遺伝的リスクバリアントが同定され,そのうち52の遺伝子は過去に本疾患と関連しているものではなかった.体重を支える荷重関節とそうではない非荷重関節には,異なる遺伝的影響があることが分かり,性別特異的および早期の発症年齢と関連した変形性関節症のリスク遺伝子座が同定された.患者組織(関節軟骨,軟骨下骨,増殖した軟骨部分)から得られた機能ゲノミクスデータが統合され,高い信頼性を持つエフェクター遺伝子が同定された.疼痛,疾患の主たる症状と関連した表現型と遺伝子的関連性についての科学的情報や,神経機能や神経発達とリンクする原因遺伝子が明らかとなった.

推薦者コメント

 本研究は,ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study: GWAS)を応用した研究である.標的疾患である変形性関節症に対して個体間における形質の違いと遺伝子配列の違いとの関連性を調査し,それを統計学的に検出する方法で,ゲノム全体から標的を効率的に探索できる.本研究成果は,標的遺伝子や分子に対する薬物治療の可能性を探求する上で重要な知見となるだろう.(長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・黒嶋 伸一郎)