日本骨代謝学会

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肥満細胞症由来の細胞外小胞はmiR-23aおよびmiR-30aを前骨芽細胞に送り込み、骨芽細胞の分化と石灰化を抑制する

Mastocytosis-derived extracellular vesicles deliver miR-23a and miR-30a into pre-osteoblasts and prevent osteoblastogenesis and bone formation.
著者:Kim DK, Bandara G, Cho YE, et al
雑誌:Nat Commun. 2021; 12(1):2527.
  • 肥満細胞症
  • 骨芽細胞
  • miRNA

論文サマリー

 全身性肥満細胞症(SM) は、骨髄や皮膚を始めとした種々の組織における肥満細胞の異常蓄積を特徴とし、骨粗鬆症を伴う疾患である。骨髄に集積した肥満細胞に由来する因子が骨量の減少を引き起こすと考えられているが、そのメカニズムは良くわかっていない。本論文では、肥満細胞が分泌する細胞外小胞(EV)が前骨芽細胞に取り込まれ、miR-23aとmiR-30aの働きを介して骨芽細胞の分化および活性化を抑制することを示した。健常者と比較して、SM患者の血中には多くのEVが流れており、さらにEV内に含まれるmiR-23aとmiR-30aも高値を示した。また、miR-23aとmiR-30a による骨芽細胞の分化抑制作用は、RUNX2およびSMAD1/5の発現抑制を介して発揮されることがin vitroとin vivoで示された。さらに、マウスへのSM由来EVの静脈内投与は、皮質骨には影響を及ぼさなかったが、海綿骨量の有意な低下を引き起こし、それは骨芽細胞の抑制作用に起因していた。

推薦者コメント

 過去に骨疾患の発症に関連するmiRNAsが調査され、miR-23aが骨粗鬆症患者の血中および骨組織で有意に高値を示す因子の一つとして報告されている (J Bone Miner Res. 2014; 29(8):1718.)。本紹介論文では、miR-23aの細胞内における発現調節やEVsへの取り込み機構については触れられていないが、そのメカニズムの解明は骨粗鬆症の発症機序の理解に繋がるかもしれない。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)