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筋組織由来の間葉系前駆細胞は骨修復に直接的に寄与する

Direct contribution of skeletal muscle mesenchymal progenitors to bone repair.
著者:Julien A, Kanagalingam A, Martínez-Sarrà E, et al
雑誌:Nat Commun. 2021;12(1):2860.
  • Prx1-cre
  • 骨修復
  • 筋骨格系外傷

論文サマリー

 著者らは、Prx1-creを用いて標識される骨膜幹細胞が、骨折の治癒過程に出現する軟骨および骨芽細胞に分化して骨修復に働くことを報告している (Nat Commun. 2018; 9(1):773.)。今回の論文では、筋間質にもPrx1-creで標識される間葉系前駆細胞 (以下、骨格筋Prx1-cre細胞) が存在することを見出した。骨格筋Prx1-cre細胞は、骨折部位に集積する線維芽細胞に寄与し、引き続き軟骨細胞および骨芽細胞に分化することにより骨修復に働いた。また、骨折時における筋組織の損傷は骨折治癒を遅延させるが、それは骨格筋Prx1-cre細胞の線維芽細胞から軟骨細胞への分化転換が抑制されることに起因していた。さらにこの時、骨格筋Prx1-cre細胞の子孫細胞による骨折部位の線維化が亢進していたが、それをイマチニブにより抑制すると骨の修復遅延が改善した。

推薦者コメント

 筋組織の骨修復に対する治癒促進効果が知られている(Plast Reconstr Surg. 2012;130(2):284e)。本論文はそのメカニズムの一端を細胞レベルで明らかにした。また、骨髄および骨膜に加えて、骨格筋の間葉系細胞も直接的な細胞ソースとして骨折治癒に寄与することをin vivoで証明した重要な報告である。著者らは過去の報告で、骨膜細胞における骨の修復能力は、骨髄由来細胞を凌駕することを示している。これらの細胞ソースと骨格筋由来細胞との連関については不明であり、今後の解明が待たれる。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)