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住血吸虫感染は破骨細胞を介して骨量を減少させる

Schistosome infection promotes osteoclast-mediated bone loss
著者:Li W, Wei C, Xu L, et al.
雑誌:PLoS Pathog. 2021; 17: e1009462
  • 住血吸虫症
  • 破骨細胞
  • RANKL
  • 骨量減少

論文サマリー

 住血吸虫症は世界中に何百万人もの罹患者がいる感染症であるが,これにより惹起される免疫学的変化は,骨代謝・骨格系にも影響を及ぼす可能性が考えられる。著者らは,慢性住血吸虫症のマウスモデルを用いて,慢性的な住血吸虫感染と骨代謝の関連性を検討した。その結果,住血吸虫感染が破骨細胞を介した異常な骨量減少をもたらし,これがNF-κB活性化受容体リガンド(RANKL)上昇とosteoprotegerin(OPG)低下を伴うことを突き止めた。さらに抗RANKL抗体によりRANKLを阻害すると,住血吸虫感染時における骨量減少を防ぐことができた。また,住血吸虫感染時に上昇するRANKLは,脾臓やリンパ節のB細胞とCD4陽性T細胞,特に濾胞ヘルパーT細胞サブセットによって産生されることが示された。これらの結果は住血吸虫感染に伴う骨量減少のリスクを明らかとするものであり,住血吸虫に対する治療に骨への治療を組み合わせることの有益性が期待される。

推薦者コメント

 住血吸虫症は血管寄生吸虫である住血吸虫属による感染症で,慢性症状として血性下痢や血尿などが知られるが,骨代謝への影響はよく知られていない。本研究により,住血吸虫感染がRANKLを介する機序により骨量を減少させることが明らかとなった。RANKLは主に骨細胞によって産生されるが,住血吸虫感染時には末梢リンパ組織のT細胞・B細胞が主な産生源となるのは興味深い。同様の現象はHIV感染などでも報告されている。住血吸虫症患者における抗RANKL抗体の効果が今後の重要な検討課題になると思われる。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)