日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

Brave heart

TOP > Hot paper > 駒場 大峰

骨格恒常性と骨格疾患への感受性を制御する構成分子群が骨細胞のトランスクリプトームマッピングにより同定される

Osteocyte transcriptome mapping identifies a molecular landscape controlling skeletal homeostasis and susceptibility to skeletal disease
著者:Youlten SE, Kemp JP, Logan JG, et al.
雑誌:Nat Commun. 2021; 12: 2444
  • 骨細胞
  • 神経ネットワーク
  • トランスクリプトーム解析

論文サマリー

 骨細胞は骨格の制御に中心的な役割を担っている。この複雑な細胞ネットワークを制御する遺伝子と分子プログラムを明らかにするため,著者らは4~26週齢のオス・メスマウスの上腕骨,大腿骨,脛骨から骨細胞を採取しトランスクリプトーム解析を行った。その結果,1239遺伝子が骨細胞特異的な遺伝子シグネチャーとして定義された。これらのうち77%は骨格における役割は知られておらず,神経ネットワークの形成を制御する遺伝子が豊富に含まれていたことから,骨細胞間の情報伝達に重要であることが示唆された。次いで著者らは733系統のノックアウトマウスにおける19項目の骨格に関するパラメーターを評価し,骨の構造と機能を制御する骨細胞トランスクリプトームシグネチャーとして26遺伝子を同定した。これらの遺伝子群には,単一遺伝子性の骨格疾患の原因となるヒトオルソログ(P = 2.4 × 10-22)や,多遺伝子性疾患である骨粗鬆症(P = 1.8 × 10-13)や変形性関節症(P = 1.6 × 10-7)に関連するヒトオルソログが豊富に含まれていた。本研究は,骨細胞のネットワーク形成と機能を制御する構成分子群を明らかとするものであり,ヒト骨格疾患における骨細胞の重要性が示される。

推薦者コメント

 骨細胞のトランスクリプトーム解析により,骨細胞と神経細胞が共通の遺伝子群を発現していることが明らかとなった。さらにこれらの遺伝子が骨粗鬆症などの骨格疾患への感受性に関連していることが示された。骨細胞は樹状突起を伸ばしネットワークを形成するという点で神経細胞に類似するが,このユニークな特徴が骨の構造と機能を制御する上で重要であることが改めて証明されたといえる。今回同定されたさまざまな遺伝子が骨格疾患の新たな治療標的となるか,今後の研究が注目される。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)