骨粗鬆症に対するロングノンコーディングRNA NRONの機能モチーフ
A functional motif of long noncoding RNA Nron against osteoporosis.
著者: | Jin F, Li J, Zhang Y et al. |
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雑誌: | Nat Commun. 2021; 12: 3319. |
- lncRNA
- 骨粗鬆症
- ER
論文サマリー
長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)は、さまざまな疾患に関与する。骨吸収におけるlncRNAの役割は不明である。本論文では、lncRNA Nronを骨吸収抑制因子として同定した。破骨細胞特異的Nronノックアウトマウスは、骨吸収活性が上昇し、骨減少症を呈した。一方、破骨細胞においてNronを過剰発現したマウスは、骨吸収低下を伴う高骨量を示した。しかし、Nronの過剰発現は骨吸収を阻害したが、脾腫を呈した。この副作用を抑えるため、Nronの機能モチーフをさらに特定した。破骨細胞においてNron機能モチーフの発現は、明らかな副作用なしに骨量減少を改善した。Nronの機能モチーフはE3ユビキチンリガーゼCUL4Bと相互作用し、ERαの安定性を調節した。これらの結果は、Nronが重要な骨吸収抑制因子であり、lncRNA機能モチーフは副作用が少なく、様々な疾患治療に応用できる可能性を示した。
推薦者コメント
本論文では、閉経後骨粗鬆症を念頭にNronによる骨吸収阻害について雌マウスを解析している。骨吸収阻害作用が雄マウスにおいても認められるのか、さらなる解析が望まれる。さらに、卵巣摘出によってエストロゲンが減少した状態にもかかわらず、Nronがエストロゲン受容体α(ERα)を安定化させて、骨吸収を抑制することを示した。この結果はERαがエストロゲン非依存的に骨吸収を抑制する可能性を示しており、非常に興味深い。(松本歯科大学・総合歯科医学研究所・岩本 莉奈・小林 泰浩)