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破骨細胞はアンジオゲニン-プレキシンB2軸を介して老化から血管を守る

Osteoclasts protect bone blood vessels against senescence through the angiogenin/plexin-B2 axis
著者:Liu X, Chai Y, Liu G et al.
雑誌:Nat Commun. 2021; 12: 1832.
  • 破骨細胞
  • angiogenin
  • 血管
  • 老化

論文サマリー

 慢性炎症および自己免疫疾患に対する治療法の1つである合成糖質コルチコイド(GC)は、骨格の成長を抑制する。GCは成長中の骨の血管新生を阻害するが、そのメカニズムは不明なままであった。本論文は、若齢マウスへのGC投与が骨幹端の血管内皮細胞の老化を誘導すること、内皮細胞の老化を阻害すると、GCによる骨血管新生の障害とそれに伴う骨形成低下を改善することを示した。アンギオゲニン(ANG)は血管新生促進活性を有するリボヌクレアーゼである。破骨細胞によって分泌されるANGが血管細胞を老化から保護する因子であることを明らかにした。 ANGは、プレキシンB2を介したリボソームRNA(rRNA)の転写を通じて、内皮細胞の増殖活性を維持した。 GC治療は、骨幹端での破骨細胞形成を抑制することによりANG産生を阻害し、その結果、内皮細胞のrRNA転写とそれに続く細胞老化を誘導した。

推薦者コメント

 CD31とエンドムチンを高発現するH型血管が成長期の骨成長に重要であることが示されている(Nature 507, 323-, 2014)。さらに、血管に随伴し、骨吸収能の低い破骨細胞が長管骨の長軸方向の伸長に寄与することが報告されている(Nat Cell Biol 21, 430-, 2019)。このタイプの破骨細胞がANGを分泌するか、GCの標的になるのか、疑問はつきない。また、GC投与で認められる現象が、生理的な加齢によっても認められるのか、今後の解析に期待したい。(松本歯科大学総合歯科医学研究所・松井 龍一・小林 泰浩)