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TOP > Hot paper > 岡本 一男

関節部位のマクロファージおよび破骨細胞を標的としたアポトーシスは、進行性関節炎に対して有効である

Targeted apoptosis of macrophages and osteoclasts in arthritic joints is effective against advanced inflammatory arthritis
著者:Caifeng Deng, Quan Zhang, Penghui He, et al
雑誌:Nat Commun. 2021; 12:2174.
  • 関節炎
  • 破骨細胞
  • マクロファージ

論文サマリー

 著者らは乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ナノ粒子を薬物キャリアとして、細胞傷害性薬剤セラストロール(CEL)を炎症関節部のマクロファージおよび破骨細胞に送達する技術を開発した。このナノ粒子は、インテグリン結合配列RGDモチーフで修飾されたPLGAから成り、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)で切断可能なPEG鎖で覆われている。MMP9が存在するとナノ粒子を覆うPEG鎖が切断されることでRGD配列が表出し、その結果RGDとαvβ3インテグリンとの結合を介して、炎症性マクロファージと破骨細胞によりCEL内包ナノ粒子が取り込まれ、アポトーシスが誘導される。アジュバント誘発関節炎ラットモデルでは、このPLGAナノ粒子は関節特異的な分布を示し、関節内の破骨細胞及び炎症性マクロファージの数を減少させた。さらに関節炎発症後でもCEL内包PLGAナノ粒子の投与により、関節の腫脹が治癒し骨破壊が顕著に抑えられた。以上より、化学療法誘発性に破骨細胞と炎症性マクロファージにアポトーシスを誘導する手法が、関節炎の治療において非常に有効であることが示された。

推薦者コメント

 MMP9で切断されることでRGD配列が表出するというナノ粒子の工夫が非常に興味深い。また関節炎ラットモデルに対する治療効果の高さが、抗TNF抗体投与群と比べても顕著であり、その有効性が伺える。Drug delivery systemを用いた次世代の治療技術としての可能性を秘めており、今後長期間投与が及ぼす他の細胞/組織への影響など、副作用についても詳細な検討を期待したい。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)