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VGLL4はTEADs由来のRunx2転写抑制作用を解除することにより骨芽細胞分化を誘導する

VGLL4 promotes osteoblast differentiation by antagonizing TEADs-inhibited Runx2 transcription.
著者:Suo J, Feng X, Li J, et al
雑誌:Sci Adv. 2020; 6(43):eaba4147.
  • 骨芽細胞
  • VGLL4
  • Runx2

論文サマリー

 転写共役因子YAPはTEADsと複合体を形成して転写活性を発現し、器官のサイズや恒常性を維持する。また、VGLL4はTEADsと結合することによりYAP/TEAD複合体の転写活性を競合的に阻害する分子として知られている。本論文では、VGLL4がRunx2における転写の活性化を介した骨芽細胞分化誘導に必須な因子であることを以下の結果から導き出した。(1) 骨芽細胞分化系譜に特異的なVGLL4欠損マウスは骨芽細胞の分化遅延による骨粗鬆症を呈した。(2) TEADsはRunx2と直接結合することにより、その転写活性を抑制し骨芽細胞分化を負に制御した。(3) VGLL4はRunx2と結合したTEADsに対して競合的に結合することにより、TEADsによるRunx2の転写抑制作用を解除し骨芽細胞分化を誘導した。

推薦者コメント

 YAPはβ-cateninの上昇を介して骨芽細胞分化を正に調節する (Bone Research. 2018; 6(18) PMID: 29872550)。今回の論文では、YAPの転写機能を介在するTEADsが骨芽細胞分化の抑制に働くことが示された。協調的に働くYAPとTEADsが骨芽細胞分化においては相反する作用を示す点は興味深い。また、VGLL4はWnt/b-catenin経路に対しては抑制的に働くとの報告もあり、以上の分子が司る骨芽細胞分化機構のさらなる解明が待たれる (Nat Commun. 2017; 8:14058)。(東京歯科大学口腔科学研究センター・溝口 利英)