MEPE遺伝子の機能喪失型バリアントは骨密度低下と骨折リスク上昇に関連する
著者: | Surakka I, Fritsche LG, Zhou W, et al. |
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雑誌: | Nat Commun. 2020; 11: 4093 |
- MEPE遺伝子
- 骨密度
- 骨粗鬆症
論文サマリー
ゲノムワイド関連解析の課題は,バリアントの多くが非コード領域に存在することである。著者らはNord-Trøndelag Health Studyの参加者の一部(2,202名)を対象に全ゲノムシーケンスを行い,このデータに基づき残りの19,705名のゲノム情報を推定し,前腕超遠位部の骨密度と関連するバリアントを探索した。その結果,骨密度と関連する既知の遺伝子座10個に加え,新たにMEPE遺伝子の機能喪失型バリアント(p.Lys70IlefsTer26,マイナーアレル頻度0.8%)が骨密度低下,骨粗鬆症,前腕骨折リスク上昇に関連していることが明らかとなった。同様の関連性は,英国,アイスランドのコホートでも確認された。このバリアントは生涯にわたり骨密度に影響したことから,成人前にスクリーニングを行うことが骨粗鬆症を予防する上で重要と考えられた。多遺伝子リスクスコアを用いることよりも,現在の遺伝子パネル検査では見逃される,影響度の大きいバリアントを見つけ出すことが,プレシジョン・メディシン(遺伝子に基づく個別化治療)を実践する上で重要と考えられる。
推薦者コメント
MEPEの主たる生理的役割は,骨芽細胞の分化成熟や骨石灰化を抑制することにあると考えられている。MEPE遺伝子のコモンバリアントが骨密度に関連することは過去に報告があるが,本研究により頻度の低い機能喪失型バリアントが骨密度に影響することがピンポイントに示された。これはMEPEの骨代謝における役割をより確定的に示したものといえる。バリアントのスクリーニング,バリアント症例への治療的介入をどのように行うべきか,今後の重要な検討課題と考えられる。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・駒場 大峰)