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アクチンバンドルタンパク質L-プラスチン阻害は骨喪失の治療標的になる

Targeting actin-bundling protein L-plastin as an anabolic therapy for bone loss.
著者:Li X, Wang L, Huang B et al.
雑誌:Sci Adv. 2020, 6:eabb7135.

論文サマリー

 アクチンバンドルタンパク質L-プラスチン(LPL)は破骨細胞の吸収活性を仲介することが報告されている。しかし、LPLの骨量減少に対する治療の可能性は未解明のままである。本論文は、LPLノックアウトマウスが骨量と皮質骨の厚さの増加を示した。また、組織学的には、単核酒石酸耐性酸性ホスファターゼ陽性細胞、骨芽細胞、CD31hiEmcnhi血管が増加し、破骨細胞が減少することを示した。LPLの欠損は、糸状仮足の形成を阻害することによって前破骨細胞の融合を妨げ、血小板由来成長因子(PDGF)-BBを放出し, CD31hiEmcnhi血管の成長と骨形成を促進する前破骨細胞の数を増加させた。LPLの発現は、RANKLに応答して、PI3K/ AKT /Sp1によって調節された。さらに、卵巣摘出術によって誘発された骨粗鬆症において、LPLノックアウトマウスは骨量を維持した。マウスの骨折治癒を促進すきるLPL阻害剤であるオロキシリンAをハーブ抽出物から特定した。

推薦者コメント

 LPLを阻害することで、単核の破骨細胞の分化段階に止めると、骨吸収活性が抑制されるのみならず、PDGF-BBの分泌によって骨形成が亢進されることを示した。単核TRAP陽性細胞から分泌されるPDGFBBを介した骨形成作用を示した以前の結果(J Clin Invest, 129, 2019)を支持している。DC-stampやOC-stampのノックアウトマウスも単核の破骨細胞のみ存在する(JEM, 202, 2005)。本論文で示された表現型が単核破骨細胞のみ存在するマウスに共通する現象か、それともLPLノックアウトに特異的な現象なのか、興味深いところである。(松本歯科大学・総合歯科医学研究所・小林 泰浩)