歯の細胞アトラスはマウスとヒトの歯の幹細胞と分化した細胞タイプを明らかにする
Dental cell type atlas reveals stem and differentiated cell types in mouse and human teeth
著者: | Krivanek J, Soldatov RA, Kastriti ME et al |
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雑誌: | Nat Commun. 2020, 11:4816. |
- 幹細胞
- シングルセルRNA解析
論文サマリー
歯の再構築とエンジニアリングには、細胞の種類と歯の成長メカニズムを理解することが不可欠である。本論文では、一生萌出し続けるマウスの切歯とヒトの萌出中および萌出後臼歯のシングルセルRNA解析を行った。成長し続けるマウス切歯において未解明であった細胞の複雑さを報告した。これは、マウス切歯の継続した萌出を可能にする細胞ダイナミクスのコヒーレントモデルを示した。このモデルは空間的に限局した幹・前駆細胞と上皮細胞と間葉細胞に分化した集団から構成されており、歯髄と様々な上皮細胞という2つの主要な分化系譜が強調して細胞増殖している。さらに、マウスとヒトの歯の形成に関与する分子の違いと種特異的な細胞サブタイプを明らかにした。
推薦者コメント
歯のエナメル質は上皮由来の細胞が、象牙質は間葉系細胞から分化することから、上皮と間葉系細胞に分けて解析を行っている。象牙芽細胞の分化に伴って、Wnt6の発現が上昇することと、Dkk1、Wisp1、NotumなどのWntシグナル阻害因子の発現も上昇することが見出された。つまり、Wntシグナルの活性化とその標的遺伝子であるDkk1などの阻害因子の発現上昇により、象牙芽細胞におけるWntシグナルが厳密に調節されていることを意味しており興味深い。(松本歯科大学・総合歯科医学研究所・小林 泰浩)