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成体マウスで脂肪細胞を除去すると大量の骨量増加が誘導される

Ablation of fat cells in adult mice induces massive bone gain.
著者:Zou W, Rohatgi N, Brestoff JR, et al
雑誌:Cell Metabolism. 2020; 32: 801-813
  • 脂肪細胞
  • 骨形成
  • BMPシグナル

論文サマリー

 著者らは以前、先天的に脂肪細胞を欠損させたマウスでは骨量が増加することを報告し、先天性全身性脂肪萎縮症で認められる骨量増加の原因の一端を明らかにした (Zou et al, PLoS Genet, 2019)。本研究では、Adiponectin(Adipoq)-Cre, ROSA-DTRマウスを用いて、ジフテリアトキシン(DT)投与により成体期で脂肪細胞を誘導的に除去させたところ、急速且つ顕著な骨硬化が引き起こされることを見出した。野生型の白色脂肪組織の移植実験やパラバイオーシスなどの解析から、末梢の脂肪組織ではなく、骨髄の脂肪細胞の消失が骨硬化の原因であることを示した。脂肪細胞の除去により、骨髄ではBMP阻害因子Chrdl1とGrem1の発現低下及びBMP活性化因子Wisp-1の発現増強が起き、その結果骨芽細胞前駆細胞でBMPシグナルが亢進し、骨形成が促進される。またBMPR阻害剤のほかEGFR阻害剤でも、脂肪細胞除去による骨量増加が抑えられた。以上より、成体でも骨髄の脂肪細胞が骨芽細胞分化を負に制御していることが示され、骨形成を促進する治療法として有効な標的経路であることが明らかにされた。

推薦者コメント

 DT投与後10日という短期間で骨量が10倍に増加しており、またCol1a1*2.3-GFPマウスを用いた解析でもDT投与4日後で著明なGFPシグナルの亢進が認められおり、非常に劇的な変化であることが伺われる。一方、骨髄のAdipoq+脂肪細胞が欠損することで、どうしてBMP制御因子の発現が変動するのか、その分子機構は不明であり、今後の詳細な解析が期待される。(東京大学大学院医学系研究科骨免疫学寄付講座・岡本 一男)