骨髄脂肪前駆細胞(MALP)は、骨リモデリングおよび病的な骨量減少において破骨細胞分化を増進する
著者: | Yu W, Zhong L, Yao L, et al |
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雑誌: | J Clin Invest. 2020; Nov 18:140214. doi: 10.1172/JCI140214. |
- 脂肪前駆細胞
- 破骨細胞
- RANKL
論文サマリー
最近著者らはマウス骨髄のscRNA-seq解析をもとに、Adiponectin(Adipoq)-Creでラベルされる脂肪前駆細胞集団MALP(marrow adipogenic lineage precursors)を同定した(Zhong at al, Elife, 2020)。本研究ではMALPが破骨細胞分化の制御に関わることを報告している。骨髄のscRNA-seq解析では、MALPが骨芽細胞や骨細胞よりもM-CSFとRANKLを高く発現しており、リガンド-受容体発現に基づく相互作用分析でもMALPが最も強く破骨細胞と相互作用する細胞集団であることが示された。さらにAdipoq-Cre RANKL floxマウス(MALP特異的RANKL欠損マウス)では1ヶ月齢から長管骨及び椎骨における海綿骨量の増加が認められた。海綿骨領域の破骨細胞数が減少した一方、骨-軟骨接合部及び皮質骨内膜では破骨細胞数に差異はなかった。またMALP特異的RANKL欠損マウスではLPS投与による頭蓋冠の溶骨性病変が抑えられ、卵巣摘出による骨量減少も部分的に抑制された。以上より、MALPは骨髄のRANKL産生源として寄与し、生理的な骨リモデリング並びに病的な骨量減少に深く関わることが示された。
推薦者コメント
果たしてAdipoq-Creが本当に骨髄の脂肪前駆細胞のみで発現されるのか、その特異性の真偽に尽きると思われる。Adipoq-Cre, ROSA26-tdTomatoマウスでは、CXCL12陽性細網細胞(CAR細胞)のほとんど全てが標識され、週齢が進むにつれ骨芽細胞でもtdTomatoが検出されるという報告もある(Mukohira et al, Int Immunol, 2019)。今後Adipoq-Creとは別の手法でも、MALPの機能が検証されることが望まれる。(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科・岡本 一男)